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特許・商標判例集~審査・審判に役立つ論旨の紹介~@たんば特許事務所

特許出願・商標登録出願の審査・審判において実務上役に立ちそうな知的財産権に関する判例を紹介していきます。

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特許 知財高裁 平成25年(行ケ)第10234号審決取消請求事件

知財高裁 平成26年11月27日第一部判決

<ポイント>
特許法第29条第2項関連
進歩性判断
主引用例と副引用例
審決における主因用例と副引用例の認定による容易想到性の判断を否定するも、副引用例を主引用例とした場合の容易想到性の判断は異なる可能性がある旨を判示したもの。


『第5 当裁判所の判断

 当裁判所は,原告の取消事由2(1)には理由があり,審決にはこれを取り消すべき違法があるものと判断する。その理由は,以下のとおりである。

(中略)

3 取消事由2(相違点の判断の誤りについて)
(1)刊行物3発明について

 ア 刊行物3には,以下の記載がある(甲3。図1及び3については,別紙刊行物3発明図面目録参照。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電界放出型冷陰極装置,その製造方法,並びに同冷陰極装置を用いた真空マイクロ装置に関する。」
「【0040】
【発明の実施の形態】」
「【0041】図1(a),(b)は本発明の実施の形態に係る電界放出型冷陰極装置を製造工程順に示す概略断面図である。
【0042】図1(b)図示の如く,この実施の形態に係る電界放出型冷陰極装置は,支持基板12と,支持基板12上に配設された電子を放出するためのエミッタ14とを有する。エミッタ14は,電界放出型冷陰極装置の用途に応じて,複数若しくは単数が支持基板12上に配設される。」
「【0044】エミッタ14の夫々は,基本的に炭素の6員環の連なりから構成される複数のカーボンナノチューブ16から形成される。通常,カーボンナノチューブ16は,図1(a),(b)示の如く,倒木が重なり合うような状態で支持基板12上に存在する。しかし,以下の図では,図を簡易にするため,カーボンナノチューブ16が概ね垂直に立ち上がった状態で示す。各エミッタ14が1つのカーボンナノチューブ16からなるようにすることもできる。全カーボンナノチューブ16の70%以上は30nm以下の直径を有する。エミッタ14を形成するカーボンナノチューブ16の底部直径に対する高さの比を表すアスペクト比は,3以上且つ1×10以下で,望ましくは,3以上且つ1×10以下に設定される。」
「【0052】次に,カーボンナノチューブを塗布,圧着,埋込み等の方法で合成樹脂製の支持基板12上に供給し,カーボンナノチューブ層26を形成する(図1(a))。ここで,支持基板の材料としては,ポリメチルメタクレート,テフロン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリカーボネート,非晶質ポリオレフィン,アクリル系樹脂,エポキシ系樹脂を用いることができる。
【0053】次に,レジストを塗布して,エミッタ14のレイアウトに従って,カーボンナノチューブ層26をリソグラフィ技術でパターニングする。この様にして,複数のカーボンナノチューブ16からなるエミッタ14を支持基板12上に形成する(図1(b))。」
「【0060】図3(a),(b)は本発明の別の実施の形態に係る電界放出型冷陰極装置を製造工程順に示す概略断面図である。
【0061】図3(b)図示の如く,この実施の形態に係る電界放出型冷陰極装置は,エミッタ14に電子を供給するためのカソード配線層28が支持基板12上に配設されている点で,図1(b)図示の電界放出型冷陰極装置と異なる。カソード配線層28,Mo,Ta,W,Cr,Ni,Cu等の導電性材料から基本的に形成される。また,支持基板12は,ガラス,石英,合成樹脂等の絶縁性材料や,Si等の半導体材料から基本的に形成される。
【0062】図3(b)図示の電界放出型冷陰極装置は,図1(b)図示の電界放出型冷陰極装置と概ね同じ方法で製造することができる。但し,図1を参照して説明した製造方法の第1及び第2例に対して,次のような変更を加える。
【0063】先ず,アノード電極(炭素源)及びカソード電極(収集部材)を用いる第1例においては,カソード電極(収集部材)から分離されたカーボンナノチューブを支持基板12上に供給する前に,支持基板12上にパターニングされたカソード配線層28を形成する。そして,カーボンナノチューブを前述の如く支持基板12上に供給し,支持基板12及びカソード配線層28上にカーボンナノチューブ層26を形成する(図3(a))。次に,エミッタ14のレイアウトに従って,カーボンナノチューブ層26をリソグラフィ技術でパターニングし,複数のカーボンナノチューブ16からなるエミッタ14をカソード配線層28上に形成する(図3(b))。」

 イ 上記記載によれば,刊行物3発明は,電界放出型冷陰極装置,その製造方法,並びに同冷陰極装置を用いた真空マイクロ装置に関するものであって(【0001】),支持基板上に形成されたカーボンナノチューブ層にレジストを塗布して,カーボンナノチューブ層26を所定のレイアウト(エミッタのレイアウト)に従って,リソグラフィ技術でパターニングする方法(【0053】)が開示されている。

(2) 相違点1について
 審決は,刊行物1発明におけるカーボンナノチューブ層のパターニング方法を刊行物3発明における「カーボンナノチューブ層の形成後にカーボンナノチューブ層をリソグラフィ技術でパターニングするという方法」に変更して,相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである旨判断した。
 しかし,刊行物1発明は,「ナノチューブ薄膜は固着性が悪く,接触や空気の流れ(たとえば空気掃除機)により容易に除かれるほどである。」(【0003】)ため,「適切な固着性を有し,より有用で堅固なデバイス構造の形成を可能にするより便利で,融通のきく方法」(【0005】)を開発することを課題とし,これを実現するため,パターン形成材料にカーボン分解材料,カーバイド形成材料,低融点金属などを用いてパターン形成し,これにナノチューブを堆積させた上でアニールすることによって,カーボン分解,カーバイド形成又は溶融を誘発させて,固着性(「ASTMテープ試験D3359-97で,2A又は2Bスケールを十分越える固着強度を指す。」(【0006】【0013】))を確保するものである。
 したがって,固着性の確保は刊行物1発明の必須の課題であって,刊行物1発明におけるパターニングの方法については,刊行物1発明と同程度の固着性を確保できなければ,他のパターニングの方法に置き換えることはできないというべきである。
 そして,刊行物3発明のパターニング方法におけるカーボンナノチューブの固着性についてみると,刊行物3発明は,「カーボンナノチューブを塗布,圧着,埋込み等の方法で合成樹脂製の支持基板12上に供給する」と記載しているのみであって,固着性について特段の配慮はされておらず,カーボンナノチューブ層が支持基板12に対して,いかなる程度の固着強度を有するかも不明である。
 よって,刊行物1発明に刊行物3発明を適用することには阻害要因があるから,刊行物1発明に刊行物3発明を適用して相違点1に係る本願発明の構成とすることを当業者が容易に想到し得るとした審決の判断には誤りがある。

(3) 被告の主張について
 被告は,刊行物3発明についても,刊行物1発明と同様に金属層の上にカーボンナノチューブ層を形成するところ(【0060】ないし【0063】),カーボンナノチューブを「塗布」のみならず,「圧着」や「埋込み」等の方法で基板上に供給するものであって(【0052】),基板とカーボンナノチューブとの固着性を考慮するものであると主張する。
 しかし,前記判示したとおり,上記記載のみでは,どの程度の固着強度を確保できるか不明であって,上記記載があるからといって,刊行物1発明に刊行物3発明を適用することはできない。
 また,被告は,刊行物3発明の「基板上にカーボンナノチューブ層を形成した後にパターニングする方法」であっても,基板の材料として刊行物1発明のパターン形成材料を用いたり,カーボンナノチューブ層の形成に先だって基板の表面に同材料の層を形成したりして,刊行物1発明と同様の手法でカーボンナノチューブの固着性を確保することも十分可能であって,刊行物3発明においても基板表面の状態やナノチューブとの接触状態を選択すること等により基板とカーボンナノチューブとの固着性を確保する必要性は認識されており,具体的な固着強度は当業者が適宜に設定する設計的事項であるというべきであると主張する。
 しかし,刊行物1発明においては,「基板(10)はカーボンと本質的に非反応性である必要がある。たとえば,カーバイドを形成しないか,カーボンを分解せず,典型的な場合,少なくとも1000°Cといった比較的高い融点をもつ必要がある。」(【0008】)とされているのであるから,基板の材料に刊行物1発明のパターン形成材料であるカーボン分解材料,カーバイド形成材料は低融点金属を用いることには阻害要因がある。また,刊行物1発明は,カーボンナノチューブの固着性の確保を重要な課題の一つとした発明であって,刊行物1発明と同程度の固着性を有することが設計事項であると認めることはできない。
 したがって,被告の主張は理由がない。

(4)小括
 以上によれば,刊行物1発明に刊行物3発明を適用することはできないので,当業者が本願発明の相違点1に係る構成を容易に想到することができたということはできず,取消事由2(1)は理由がある。

4 なお,今後の特許庁における審理のため,一言付言する。審決は,刊行物1発明を主引用例,刊行物3発明を副引用例として容易想到性を判断したものであり,本判決は,このような判断の枠組みに従って,本願発明を容易想到であるとした審決には誤りがあると判断するものである。もっとも,刊行物3には,カーボンナノチューブを塗布するなどの方法で基板にカーボンナノチューブ層を形成し,リソグラフィ技術でパターニングする技術が開示されており,本願発明と相当程度一致する部分があると認められるところ,本判決は,刊行物3発明を主引用例とした場合に,本願発明の容易想到性を判断することについてまで否定するものではない。したがって,今後の審理においては,単に刊行物1発明を主引用例とした場合の容易想到性のみを判断するのではなく,刊行物3発明を主引用例とした場合の容易想到性についても検討する必要があると思われる。


























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  1. 2014/12/08(月) 11:29:46|
  2. 進歩性(特29条2項)

特許 知財高裁 平成25年(行ケ)第10277号審決取消請求事件

知財高裁 平成26年8月27日第二部判決

<ポイント>
特許法第29条第2項関連
進歩性判断
互換性の有無
容易想到性は、本願発明と引用発明との相違点を本願発明の構成に置換する示唆があるか、また、技術常識から相違点について相互の互換性があるか否かにより判断されるべきことを説示し、引用刊行物中に相違点に係る技術が併記されていても容易に置換可能といえないとして、進歩性を肯定した事例。



『第5 当裁判所の判断

(中略)

2 取消事由2について

(中略)

 (2) 本願出願時の技術常識

 弁論の全趣旨,甲2及び乙1~10によれば,以下の事実が,本願出願時における技術常識として認められる。
 遅くとも平成7年ころには,アルミニウムのろう付けの分類として,フラックス法とフラックスレス法があること,フラックスレス法には真空法と雰囲気法があること,雰囲気法には窒素ガス中で行うものがあること,ろう付けを良くするためにはろう材や芯材に工夫をすることが一般的であり,ろう付けに用いられるろう材の基本組成として,真空法ではAl-Si-Mg系であり,雰囲気法ではAl-Si-微量添加元素(Bi,Be,Sr等)であること,芯材の基本構成として,窒素雰囲気下ではMgを微量添加することが知られていた(弁論の全趣旨,乙2の639頁左欄最下行~640頁左欄下から11行,図1,表2,乙3の段落【0008】,【0022】,【0027】,【0037】表1の実施例12,14,15,【0042】,乙7の「従来の技術」,乙10の表7)。このように,アルミニウム合金ブレージングシートを使用してろう付けする際に,どのような成分組成のものが使用されるかは,通常,ろう付け法により決せられ,真空雰囲気下でのろう付け法と,管理された窒素雰囲気下でのろう付け法が,いずれも同じフラックスレスろう付け法であるとしても,これらのろう付け法において使用されるろう材,芯材は,通常,区別されるものであるとされていた。

 (3) 相違点2の容易想到性について

 審決は,フラックスレスろう付けの手法として,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法がともに技術常識であることから,相違点2に係る構成は,当業者が容易に想到できるものと判断した。
 確かに,本願発明と引用発明とは,いずれも,ろう付けされた部材の製造に使用される,芯材用のアルミニウム合金製の帯材又は板材において,所定量のイットリウムを含有させる点で共通するものである。 また,エロージョンは,ろう材が芯材を侵食する現象であり,芯材の中にシリコンが浸透して腐食が起きやすくなるために,ろう付けの際に回避すべきものであるが,エロージョンが起きれば,侵食された芯材部分にろう材が流れ込む結果,ろう付けのための充分なろう材が行き渡らずに所定の付着効果が得られず,ろう付け性が低下するから,エロージョンの抑制には,結果的にはろう付け性を
改善するといえる側面もあり,本願発明と引用発明の技術課題に重なり合う部分が存在すること自体は否定し難い。しかしながら,本願発明は,管理された窒素雰囲気でのろう付けによるものであるのに対して,引用発明は,真空雰囲気下でのろう付けによるものであるという相違点があるのであり,相違点2に係る構成が当業者にとって容易に想到し得るものか否かは,結局,刊行物2に記載されたイットリウムの使用が,管理された窒素雰囲気下でのろう付けにも使用できるという示唆があるかどうか,また,本願出願時の技術常識から,それぞれのろう付け法におけるろう材や芯材の相互の互換性があるといえるか否かにより判断されるべきである。
 しかるに,刊行物2そのものには,管理された窒素雰囲気下でのろう付けについて,何らの記載も示唆もない。また,芯材用アルミニウム合金にイットリウムを含有させることにより,管理された窒素雰囲気下でのろう付けにおいて,改善されたろう付け性が得られることについて,何らの記載も示唆もない。そして,上記のとおり,本願出願時には,ろう付け法ごとに,それぞれ特定の組成を持ったろう材や芯材が使用されることが既に技術常識となっており,ろう付け法の違いを超えて相互にろう材や芯材を容易に利用できるという技術的知見は認められない。したがって,真空雰囲気下でのろう付け法である引用発明において,芯材用アルミニウム合金にイットリウムを含有させることにより,ろう付けの際に生じるエロージョンを抑制することができるものであるとしても,管理された窒素雰囲気下でのろう付け法において,改善されたろう付け性が得られるかどうかは,試行錯誤なしに当然に導き出せる結論ではない。
 したがって,相違点2に係る構成を当業者が容易に想到し得たとはいえず,この点に関する審決の判断は誤りである。

 (4) 被告の主張に対する判断

 ア 被告は,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法は,いずれもフラックスレスのろう付け法として,当業者において良く知られた技術であり(乙1~7),また,特開昭62-13259号公報(乙1),特開昭58-163573号公報(乙4),特開昭53-131253号公報(乙5),特開昭63-157000号公報(乙6),特開昭61-7088号公報(乙7)には,これらのろう付け法が並列して記載されていることからすると,これらのろう付け法は,当業者にとって適宜置換可能な方法といえるから,刊行物2に接した当業者であれば,刊行物2に記載された材料からなる芯材用アルミニウム合金製の帯材又は板材を,真空ろう付け法だけでなく,窒素ガス雰囲気ろう付け法にも使用できることを容易に理解すると主張する。
 確かに,上記乙1,5~7の記載によると,昭和50年代から昭和60年代初めにかけて,ろう付け法の種類に着目することなく,芯材,ろう材や母材にBe,Biを添加する方法がろう付け性向上のための技術思想として把握されていたことがうかがわれる(もっとも,乙6の第1表,第2表には,真空雰囲気下ではろう材にMgを必ず含めているのに対し,窒素雰囲気下
ではろう材にMgを含ませておらず,特定の芯材やろう材が特定のろう付け法において意識的に使い分けられていたとみ
る余地もある。)。しかしながら,ろう付け法が並列に記載されていることと,各方法において利用されていた技術が相互に
容易に置換可能であることは別次元の問題であって,上記(2)のとおり,その後の本願出願時においては,技術常識として,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法とでは,使用されるアルミニウム合金ブレージングシートは,通常,区別されるものであるとされていたと認められるから,当業者にとって,真空ろう付け法において使用できた芯材を,窒素ガス雰囲気下のろう付け法において,当然に利用できると認識することは困難といえる。
 したがって,乙1,4~7に,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法が並列して記載されているからといって,これらのろう付け法が,当業者にとって適宜置換可能な方法であることにはならない。
 また,被告の提出した乙1~10のいずれにも,ブレージングシートの芯材にイットリウムを含有させること,それにより窒素ガス雰囲気ろう付けにおいて改良されたろう付け性が得られることについての記載も示唆もないから,窒素ガス雰囲気
ろう付け時のブレージングシートにおけるイットリウムの使用を技術常識ということもできないから,これらの書証をもって相違点2に係る構成に容易に想到することができるともいえない。

 よって,被告の主張は採用できない。

 イ 被告は,ろう材が,ろう付け法を決定する上で重要な要素であることが技術常識であるとしても,引用発明はろう材を特定するものではないから,引用発明において,真空ろう付け法に代えて,窒素ガス雰囲気ろう付け法とすることに技術的支障はないと主張する。
 しかしながら,刊行物2の記載によれば,引用発明の芯材用アルミニウム合金製の帯材又は板材は,その両面又は片面にろう材をクラッドして,アルミニウム合金ブレージングシートとして使用することを前提とするものである。このように,引
用発明が,ろう材を特定しないものであるとしても,相違点2についての容易想到性の判断,すなわち,ろう付け法の置換可能性の判断において,ろう材及びろう付け法に関する前記の技術常識は当然の前提となるものであり,異なったろう付け法におけるろう材の利用に技術的支障がなくなるわけではない。

 したがって,引用発明が,ろう材を特定しないものであるとしても,そのことをもって,引用発明において,真空ろう付け法
に代えて,窒素ガス雰囲気ろう付け法とすることに技術的支障はないということはできない。

 ウ 被告は,フラックスレス真空ろう付け法は,設備費(真空炉)が高く,メンテナンスが面倒である,炉内に付着するマグネシウムを定期的に除去することが必要である,ろう付けができない材料があるなどの実用上の問題点を有するもの
でもあり,かかる問題を解決する手段として,マグネシウムの添加や高真空雰囲気調整を行わなくとも,溶融ろう合金のぬれ性や流動性を著しく改善でき,真空ろう付け法に比較し設備費も少ないフラックスレス窒素ガス雰囲気ろう付け法が広く知られているから(乙3,10),刊行物2に接した当業者であれば,引用例に記載された材料からなる芯材用アルミニウム合金製の帯材又は板材を,真空ろう付け法だけでなく,窒素ガス雰囲気ろう付け法にも使用する動機付けがあると主張する。
 しかしながら,ろう付け部材を製造する際に,真空ろう付け法の問題点を認識し,これを解消する手段として,窒素ガス雰囲気ろう付け法を適用するようなことがあったとしても,上記(2)のとおり,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法とで
は,使用されるアルミニウム合金ブレージングシートは,通常,区別されるものであるから,窒素ガス雰囲気ろう付け法において,真空ろう付け法で適用される芯材用アルミニウム合金製の帯材又は板材をそのまま当然に使用することは想定し難く,窒素ガス雰囲気ろう付け法に適すると認識されていた成分組成の芯材用アルミニウム合金製の帯材又は板材を
,一般的に使用するものと解される。
 したがって,真空ろう付け法における問題点の存在が,当然に,引用発明の芯材用アルミニウム合金製の帯材又は板材を,窒素ガス雰囲気ろう付け法に使用する動機付けを導き出すものとはいえず,被告の主張は採用できない。』



























たんば特許事務所
特許出願や商標登録出願のエキスパート
安心できる相談役


























  1. 2014/09/02(火) 15:15:45|
  2. 進歩性(特29条2項)

特許 知財高裁 平成25年(行ケ)第10242号審決取消請求事件

知財高裁 平成26年7月17日知財高裁第1部判決


<ポイント>
特許法第29条第2項関連
進歩性判断
動機付け
阻害要因
発明1に発明2を組み合わせる動機付けを欠く上に、発明1と本件発明とは解決課題が異なり、発明1には本件発明に想到することへの阻害要因があることから、進歩性を肯定した事例。



『第4 当裁判所の判断

当裁判所は,原告の本件発明についての各取消事由の主張にはいずれも理由があり,審決が,本件発明は,甲16発明,甲17公報記載の事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとした点には誤りがあるので,審決は取り消されるべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。

(中略)

2 取消事由1(相違点1についての容易想到性判断の誤り)について

 (1) 相違点1の認定について

 ア 前記1(2)のとおりの甲16公報の記載によれば,審決が認定したとおり甲16発明が記載されていると認められる。

 イ そして,甲16発明と本件発明1を対比すると,両者の間には,審決の認定するとおり(前記第2の4(3)ア),「拡散手段」について,本件発明1では「光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズ」であって,「光の経路と交差する所
定の面上に延びるように設けられた透明な基板と,該透明な基板の厚さ方向一方の面上に並ぶように設けられた複数の凸レンズ部から形成し,各凸レンズ部を,各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成し,前記各凸レンズ部を,互いに近傍に配置された凸レンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成し,これにより,光を前記複数の凸レンズ部のそれぞれの曲率に応じてLEDの並設方向に屈折させて前記拡散を行う」のに対し,甲16発明では「記各LED12から照射面3までの光の経路中に光を拡散させる散乱シート2」であり,「ポリエステルフィルム上に微粉末からなる光拡散層を積層することにより形成し,これにより光を散乱させて拡散を行う」という相違点(相違点1)があると認められる。

 ウ 以上の認定に対し,被告は,甲16発明の散乱シート2も,主としてLEDの並設方向に光を拡散させることを必須の構成とするものであるから,「光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散レンズ」という構成は,甲16発明と本件発明1との相違点に当たらないと主張する。
 しかし,上記1(2)によれば,甲16発明は,複数のLEDを直線上に並べたLEDアレイからの光をシリンドリカルレンズ(棒状レンズ)によって所定の照射面の範囲に線状に収束させる従来の技術では,LEDチップの配列のユラギやシリンドリカルレンズの偏芯のため,LEDアレイの縦方向(シリンドリカルレンズと垂直な方向)及び横方向(シリンドリカルレンズと平行な方向)の照度分布に偏りが生じ,LEDアレイの縦方向の有効照射巾L2が狭く,かつ面照度のユラギも大きいという課題(すなわち,第10図,第11図のとおり,有効照射巾L2について,縦方向の幅が狭く,また,横方向には光軸に対して相対的に縦幅が広いところと狭いところとが生じ,全体的に蛇行している。)を解決するために,「照射面の照度を均一にし,かつ有効照射巾を広げる手段を提供すること」を目的とするものである(【従来の技術】,【発明が解決しようとする問題点】)。そして,甲16発明は,その問題点を解決するための手段として,シリンドリカルレンズ14により,LEDアレイ1からの光を線状に集束させた上で,シリンドリカルレンズ14から照射面3までの光の経路中に光を光学的に散乱させるポリエステルフィルム上に微粉末からなる光拡散層を積層することにより形成した散乱シート2を設けるという構成を採用し,シリンドリカルレンズによって線状に集束された光の束を,散乱シート2により光学的に散乱させるものであり(【問題点を解決するための手段】,【作用】,【実施例】),このような構成により,光の収束特性を弱めて,有効照射巾の拡大を図り,その結果,ユラギや蛇行に対する改善を実現している(【発明の効果】)。
 そうすると,甲16発明の上記目的のうち,有効照射巾L2の幅を広げるという目的を達成するためには,各LEDの並設方向(LEDアレイの横方向)への散乱ではなく,同方向と直交する方向(LEDアレイ及びシリンドリカルレンズと垂直な方向)に光を拡散させる必要があることは明らかである。また,甲16公報には,散乱シート2が,各LEDの並設方向への光の散乱と,同方向と直交する方向への光の散乱のいずれかを主又は従として行うものであるとか,各LEDの並設方向と直交する方向への光の拡散の程度を制御するという機能を有する旨を示唆する記載はなく,ポリエステルフィルム上に微粉末からなる光拡散層を積層するという散乱シート2の上記構成からすれば,散乱シート2は,光の拡散方向を一定の方向に制御することなく,無指向にいずれの方向にも同程度に散乱させるものと認められる。
 甲16発明において,各LEDの並設方向と直交する方向に光が拡散される効果が生じることは,甲16発明の実施例の照度分布における有効照射巾L2が,従来例と比較して2倍に拡大していること(甲16公報の第3図,第4図のL1。散乱シートの構成からすれば,光は横方向にも同程度拡散されるため,横方向の均一性も向上している。)によっても,裏付けられている。したがって,甲16発明の散乱シート2は,各LEDの並設方向だけではなく,各LEDの並設方向と直交する方向にも,同程度,光を拡散させるものであると認められる。
 なお,従来技術による照度分布では,有効照射巾が全体的に蛇行しているところ,各LEDの並設方向(横方向)へ光を拡散させることによっても,蛇行が改善する部分(有効照射巾L2の縦幅の広いところから,その左右の有効照射巾L2の縦幅の狭いところへ光が拡散される部分)では,その限度で,有効照射巾も結果として広がる(当該縦幅の狭い部分についての縦幅が広がる。)という効果が生じることになるが,その場合に有効照射巾の縦幅が広がる範囲の上限は,従来の照度分布における有効照射巾の縦幅の上限に限定されることになるところ,甲16公報には,「有効照射巾を広げる」との目的や効果を,そのような限度に限定することを示唆する記載はなく,むしろ,上記のとおり,甲16発明は,横方向と同程度に縦方向にも光が拡散される構成を採用しているのであるから,主として横方向に光を拡散させることによって,甲16発明の課題が解決されるものとはいえず,甲16発明が,主として横方向に光を拡散する構成を備えるものとはいえない。
 以上によれば,甲16発明の散乱シート2が「光を主に各LEDの並設方向に拡散させる拡散手段」であるとは認められず,被告の主張を採用することはできない。

 (2) 相違点1に係る構成の容易想到性について

 ア 上記1(1)によれば,本件発明1は,複数のLEDが並設され,各LEDの光がシリンドリカルレンズを通過して一直線状に集光するようにした従来の照明装置では,集光位置において各LEDの並設方向に光量のむらを生じ(【0004】【0005】),一方,光量のむらを低減するために各LEDから集光位置までの光の経路中にすりガラスを設けると,光が乱反射するため光量が無用に減衰する(【0006】),という課題を解決するために,すりガラスの代わりに,「光の経路と交差する所定の面上に延びるように設けられた透明な基板と,該透明な基板の厚さ方向一方の面上に並ぶように設けられた複数の凸レンズ部から形成し,各凸レンズ部を,各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成し,前記各凸レンズ部を,互いに近傍に配置された凸レンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成」した拡散レンズを,各LEDから集光位置までの光の経路中に設け,「前記各凸レンズ部を,互いに近傍に配置された凸レンズ部同士で各LEDの並設方向への曲率半径が異なるように形成」するという構成を採用したものである(【0007】【0008】)。そして,各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成されているので,光は拡散レンズの各レンズを通過する際に各LEDの並設方向と直交する方向にはほとんど拡散されず,主に各LEDの並設方向に拡散されることから,光が無用に減衰することなく所定の位置に線状に集光されるとともに,集光位置における光量のむらを低減することができるという効果を生じるもの(【0009】)と認められる。
 したがって,本件発明1は,照射面における各LEDの並設方向のみの光のむらを問題とし,これを解消しつつ,光量の無用の減衰をさせないという課題を解決するため,光の散乱角度を制御し,光を各LEDの並設方向と直交する方向にはほとんど拡散させず,主に各LEDの並設方向という一定の方向にのみ拡散させることができる構成を採用したものである。

 イ また,上記1(3)によれば,甲17公報には,従来の光拡散体には,①乱反射により光を拡散するものと,②光の屈折により拡散を行うものがあるが,①光の乱反射を利用する光拡散体には,均一面照明を行うために前方散乱を増やそうとすると後方散乱も増え画面が暗くなったり(低い輝度レベル),照明ムラを均一化するために光拡散を強くしようとすると,後方散乱も大きくなり光の透過率が著しく低下し,画面が暗くなるという欠点があり(【0002】),②光の屈折を利用する光拡散体には,拡散角度の異方性を制御することは困難であり,また,製造可能な表面形状の自由度の点において改善の余地があるという問題点があったため(【0003】),これらを解決し,「煩瑣な製造プロセスを用いることなく,かつ,拡散角度の異方性の制御など光拡散体の設計変形も容易に行うことができる,高解像度・高透過率を有する光拡散体」の製造方法を提供することを課題とすること(【0006】)が記載されている。
 そして,甲17公報に記載された製造方法は,上記課題の解決方法として,微小凹凸形状が転写されたモールドを,「1方向にあるいは2つの方向に」引き伸ばしてから,同モールドに硬化性樹脂を流し込み,これを硬化後,離型して,光拡散体を製造するというものであるが(【0007】),このうち,モールドを,一方向に延伸して光拡散体を製造作成した場合には,光拡散体の凸部は扁平(切断面の形状の曲率半径が大きい)の細長い形状のものに変わって,光拡散体の凸部の,延伸方向と同じ方向の切断面における方が,延伸方向に直角の切断面の方より曲率半径が大きくなり,曲率半径の大きい断面を通過する光は,曲率半径の小さい断面を通過する光よりその屈折は小さくなり,光の拡散角度はより狭くなるため,光を特定の方向に集中的に拡散させることができるという機能を有すること(【0009】)が開示されている。
 したがって,甲17公報には,光の拡散方向を制御して,特定の一方向に集中的に拡散させることができる光拡散体として,「表面が不規則な微小凹凸形状を有する原型にモールド樹脂材料を注型して微小凹凸形状が転写されたモールドを一方的に延伸し,使用する原型の凸部形状である半球が一方向に延伸された結果,光拡散体の凸部が前記半球より扁平(切断面の形状の曲率半径が大きい)の細長い形状のものに変わっているシート(フィルム)状の光拡散体であって,前記凸部の,延伸方向と同じ方向の切断面における方が,延伸方向に直角の切断面の方より曲率半径が大きくなっており,曲率半径の大きい断面を通過する光は,曲率半径の小さい断面を通過する光よりその屈折は小さくなり,光の拡散角度はより狭くなる拡散角度の異方性を制御可能な高透過性の光拡散体」(甲17発明)が記載されていると認められる(【0009】。当事者間に争いがない。)。

 ウ 一方,甲16発明は,上記(1)ウのとおり,従来の技術では,照射面のうち,LEDアレイの並設方向(横方向)の照度にも,これと直交する方向(縦方向)の照度にも偏りが生じ,縦方向の有効照射巾が狭く,かつ均一な照度を得られないという課題を解決するため,光を無指向に散乱させる散乱シート2(ポリエステルフィルム上に微粉末からなる光拡散層)を設けることにより,光をLEDアレイの並設方向にも,これと直交する方向(縦方向)にも散乱させ,照射面については均一な照度となるようにし,その縦方向については有効照射巾を拡大できるようにしたものである。
 そうすると,甲16発明は,主としてLEDアレイの並設方向に光を集中的に拡散させることを課題とするものではなく,かえって,これと直交する方向にも光を拡散させることを課題とするものであるから,光を特定の1つの方向にのみ集中的に拡散させるという機能を有する光拡散体である甲17発明を,甲16発明に組み合わせることは,その動機付けを欠くものであり,当業者が容易に想到することができるものとは認められないというべきである(なお,甲17公報には,微小凹凸形状が転写されたモールドを,2つの方向に引き伸ばしてから,同モールドに硬化性樹脂を流し込んで製造する光拡散体も開示されていると認められるから,微小凹凸形状を2つの直交する方向に引き伸ばしたモールドから製造した光拡散体であれば,当業者が,甲16発明の課題を解決するために,甲16発明の散乱シート2に代えて組み合わせることは容易であると考える余地があるが,かかる光拡散体は,そもそも,「各凸レンズ部を,各LEDの並設方向への曲率半径が各LEDの並設方向と直交する方向への曲率半径よりも小さい曲面状に形成し」た構成を備えているとは認められないから,甲16発明と組み合わせても本件発明1の構成にはなり得ない。)。
 また,甲16発明と本件発明1との関係をみても,甲16発明と本件発明1とは,照射面における光のむらを解消することを課題の一部とする点では共通するが,甲16発明は,照度のユラギを改善して照射面全体における照度を均一とすることを目的とし,これに加えて,有効照射巾の拡大のため,縦方向にも光を散乱させることを課題とするものであり,かつ,その結果として,照射面における一定程度の照度の低下はやむを得ないことを前提とし(【実施例】),これを防止することは解決課題とはしていないのに対し,本件発明1は,各LEDの並設方向と直交する方向への光の拡散は課題としておらず,かえって,同方向へはほとんど拡散させずに,光を無用に減衰させることなく主に各LEDの並設方向に集光させ,かつ,照度の低下を防止することを必須の課題とするものであるから,両発明の解決課題は全体として異なるものである。それだけではなく,本件発明1は,各LEDの並設方向と直交する方向への光の拡散はほとんどさせないことにより,光を無用に減衰させることなく集光することを解決手段の1つとするものであるから,これとは逆に,同方向への光の拡散を課題の一部とする甲16発明には,本件発明1を想到することについての阻害要因が存するというべきである。


 エ 被告の主張について
 (ア) 被告は,甲16発明の課題の1つである「有効照射巾を広げる」とは,光を照射面で線状に収束させるにあたり,光軸の近傍で有効照射巾をほとんど確保することができない箇所が生じてセンサー出力のバラツキが生じないよう,光軸の近傍でセンサ機能等に必要な有効照射巾を十分に確保し,以て必要な光量を確保する意義,と解するのが相当であり,他方,本件発明1の課題は,光軸近傍で必要な有効照射巾を確保することを否定するものではなく,乱反射により無用に光量が減衰することを防止する趣旨のものであるから,甲16発明と本件発明1の課題とは相反するものではないし,甲16発明から本件発明1を想到する阻害要因はなく,両発明は,照射面の照度の均一化・光量のむらの低減,光量の確保について,具体的な課題を共通にするものであり,甲16発明から本件発明1に到達する動機付けは十分にあると主張する。
 しかし,甲16発明の対象とするセンサの性質上,甲16発明が,各LEDと直交する方向(縦方向)へ無限定に光を拡散することを課題とするものではないことは当然であるとしても,甲16発明は,照射面における縦方向の有効照射巾が狭いということを解決課題とするものである以上,縦方向に光を拡散させることを必須とするものであるし,甲16発明の採用する光拡散体は,縦方向へ無限定に光を拡散させることを可能とする構成でもない。そして,甲16公報の記載全体によっても,光の拡散を主に各LEDの並設方向へ行うということを課題とすることを示唆する記載はない。他方,本件発明1は,光軸近傍で必要な有効照射巾を確保することを否定するものではないとしても,集光位置の縦方向における照度の確保(有効照射巾の確保)を従前の技術についての解決が必要な課題としてとらえているとは認められない(甲39,45)。
 したがって,本件発明1は,各LEDの並設方向と直交する方向へはほとんど光を拡散させないことを前提としているのに対し,甲16発明は,集光位置の縦方向における照度の確保(有効照射巾の確保)を解決課題として,各LEDの並設方向と直交する方向にも,同並設方向と同程度に光を拡散させるものであるから,甲16発明と本件発明1の課題とは異なるものであり,甲16発明から本件発明1を想到する阻害要因があるというべきである。したがって,被告の上記主張は採用できない。
 (イ) 被告は,甲16発明及び甲17発明は,いずれも,具体的な技術分野が同一であること,いずれも,照明ムラを均一化して,かつ光量を十分に確保するということを発明の課題としており,発明の具体的な課題を共通にすること,甲16発明
は,光拡散板として「散乱シート材料」を備えた発光装置に関する発明であり,甲17発明は,その「散乱シート材料」を従来技術とし,その欠点を解決することを課題として,相違点1に係る構成を採用した発明であることから,甲16発明の「散乱シート」に替えて,甲17発明の構成を適用することについては十分な動機付けがあると主張する。
 確かに,甲17発明は,甲16発明で採用されているような光拡散体を従来技術の1つとし,その欠点である光量の確保及び光の異方性の制御を解決課題とするものである。しかし,一方で,甲16発明は,光を制御して一方向のみへ拡散することや,光量の確保を解決課題としていないことは上記のとおりであるから,両発明がその具体的な課題を共通にするとはいえない。また,甲16発明は,照射面の縦方向と横方向の双方向へ光を拡散することを課題とし,双方向に光を散らすことを可能とする光拡散体(散乱シート)を採用するものであるのに対し,甲17発明は,照射面のいずれか一方の方向へ主に光の拡散をしようとするものであり,また,光量を確保しようとするものであるから,甲16発明に甲17発明を適用することを想到することは容易とはいえない。
 (ウ) また,審決は,照明の分野において,「光のむらを解消しつつ,光量の確保をする」ことは一般的課題であると認定して,甲16発明においても同課題に基づいて甲17発明を適用することは容易であると判断する。しかし,仮に上記課題が一般的な課題であるとしても,甲16発明が,照射面の縦方向と横方向の双方向へ光を拡散することを具体的な解決課題としている以上,甲16発明に,照射面のいずれか一方の方向へ主に光を拡散するものである甲17発明を適用することが容易とはいえないことは,上記判示のとおりである。さらに,審決は,甲16公報の【実施例】に,「ポリエステルフィルム表面をヘアラインの凹凸化加工によって光を散乱させ」るものが記載されていることをもって,甲16発明において同方性の散乱シートの代わりに異方性の散乱シートを選択することも当業者において一般的になされているといえるとも認定するが,同記載からは,ヘアラインの凹凸化加工によって甲16発明の上記解決課題をどのように解決するのかという具体的な実施態様が不明であるから,同記載を根拠として,当業者が甲17発明を甲16発明の散乱シートの代わりに適用することが容易であるということもできない。

 (3) 以上によれば,甲16発明について,甲17発明を適用することが当業者にとって容易想到であるということはできず,本件発明1が特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるとした審決の判断には誤りがあり,その誤りは審決の結論に影響を及ぼすものである。 』


























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  1. 2014/07/30(水) 12:15:25|
  2. 進歩性(特29条2項)

特許 知財高裁 平成25年(行ケ)第10195号審決取消請求事件

知財高裁平成26年5月30日知財高裁特別部判決

<ポイント>
特許法第67条の3第1項
特許法第68条の2
特許権の存続期間の延長登録要件
存続期間が延長された特許権の効力


・先行処分により存続期間の延長登録がなされていたとしても、後行処分により特許発明の実施の禁止が解除される範囲があるときは、特67条の3第1項に規定する延長登録の拒絶理由を充足しない旨が説示された。
・医薬品の成分を対象とする特許発明について、承認を受けることによって禁止が解除される特許発明の実施の範囲は、医薬品の審査事項のうち、成分、分量、用途、用量、効能、効果によって特定される医薬品の製造販売等の行為であると解する旨が説示された。
・医薬品の成分を対象とした特許発明について、存続期間が延長された特許権は、成分、効能、効果、用法、用量によって特定された特許発明の実施の範囲で効力が及ぶ旨が説示された。



『第4 当裁判所の判断

 当裁判所は,審決には,以下のとおりの誤りがあると判断する。
 すなわち,審決は,概要,①承認の対象となる医薬品は,承認書に記載された事項で特定されたものであるのに対して,特許発明は,技術的思想の創作を「発明特定事項」によって表現したものであるから,両者は異なる,②したがって,特許法67条の3第1項1号該当性を判断するに当たって,「特許発明の実施」は,処分の対象となった医薬品その物の製造販売等の行為ととらえるべきでなく,処分の対象となった医薬品の承認書に記載された事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する全ての事項(発明特定事項に該当する事項)によって特定される医薬品の製造販売等の行為ととらえるべきである,③処分の対象となった医薬品の「発明特定事項に該当する事項」を備えた先行医薬品についての処分(先行処分)が存在する場合には,特許発明のうち,処分の対象となった医薬品の「発明特定事項に該当する事項」によって特定される範囲は,先行処分によって実施できるようになっていたというべきであり,同法67条の3第1項第1号により拒絶される,と判断した。
  しかし,審決の上記判断には,誤りがある。その理由は,以下のとおりである。

1 特許法67条の3第1項1号該当性判断の誤り(取消事由1)について

(1) 特許発明の存続期間の延長登録制度の趣旨

 特許法は,67条1項において,特許権の存続期間を特許出願の日から20年と定めるが,同時に,同条2項において,その特許発明の実施について政令で定めるものを受けることが必要であるために,その特許発明の実施をすることができない期間があったときは,5年を限度として,その存続期間の延長をすることができると定めて,特許権の存続期間の延長登録制度を設けた。
 特許権の存続期間の延長登録の制度が設けられた趣旨は,以下のとおりである。
 すなわち,「その特許発明の実施」について,同法67条2項所定の「政令で定める処分」を受けることが必要な場合には,特許権者は,たとえ,特許権を有していても,特許発明を実施することができず,実質的に特許期間が侵食される結果を招く(もっとも,このような期間においても,特許権者が「業として特許発明の実施をする権利」を専有していることに変わりはなく,特許権者の許諾を受けずに特許発明を実施する第三者の行為について,当該第三者に対して,差止めや損害賠償を請求することが妨げられるものではない。したがって,特許権者の被る不利益の内容として,特許権の全ての効力のうち,特許発明を実施できなかったという点にのみ着目したものであるといえる。)。そして,このような結果は,特許権者に対して,研究開発に要した費用を回収することができなくなる等の不利益をもたらし,また,開発者,研究者に対しても,研究開発のためのインセンティブを失わせることから,そのような不都合を解消させ,研究開発のためのインセンティブを高める目的で,特許発明を実施することができなかった期間について,5年を限度として,特許権の存続期間を延長することができるようにしたものである。
 なお,政令で定められた薬事法の承認や農薬取締法の登録は,いわゆる講学上の許可に該当し,製造販売等の行為が,一般的抽象的に禁止され,各行政法規に基づく個別的具体的な処分を受けることによって初めて,当該行為を行うことが許されるものであるから,特許権者が,許可を得ようとしない限り,当該製造販売等の行為を禁止された法的状態が継続することになる。しかし,特許法は,特許権者が,許可を得ようとしなかった期間も含めて,特許発明を実施することができなかった全ての期間(5年の限度はさておいて)について,存続期間延長の算定の基礎とするのではなく,特許発明を実施する意思及び能力があってもなお,特許発明を実施することができなかった期間,すなわち,当該「政令で定める処分」を受けるために必要であった期間に限って,存続期間延長の対象とするものとした。この点については,「その特許発明の実施をすることができない期間」とは,「政令で定める処分」を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から,当該「政令で定める処分」が申請者に到達することにより処分の効力が発生した日の前日までの期間を意味すると解すべきであるとした判例(最高裁平成10年(行ヒ)第43号平成11年10月22日第二小法廷判決・民集53巻7号1270頁参照)に照らしても明らかである。
 このように,特許権の存続期間の延長登録の制度は,特許発明を実施する意思及び能力があってもなお,特許発明を実施することができなかった特許権者に対して,「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除されることとなった特許発明の実施行為について,当該「政令で定める処分」を受けるために必要であった期間,特許権の存続期間を延長する措置を講じることによって,特許発明を実施することができなかった不利益の解消を図った制度であるということができる。

(2) 特許法67条の3第1項1号を理由とする拒絶査定の要件について
 
 特許権の存続期間の延長登録の出願を拒絶すべきとした審決の判断の当否を検討するに当たっては,拒絶すべきとの査定(審決)の要件を規定した根拠法規である特許法67条の3第1項1号の要件適合性を判断することにより結論を導くべきである(先行処分を理由として存続期間が延長された特許権の効力がどの範囲まで及ぶかという点は,特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったか否かとの点と,必ずしも常に直接的に関係する事項であるとはいえない。)。
 そこで,上記の特許権の存続期間の延長登録制度の趣旨に照らし,同法67条の3第1項1号の規定を検討すると,「その特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であった」との事実が存在するといえるためには,①「政令で定める処分」を受けたことによって禁止が解除されたこと(例えば,先行処分を受けたことによって既に禁止が解除されていると評価判断できないこと等),及び,②「政令で定める処分」によって禁止が解除された当該行為が「その特許発明の実施」に該当する行為(例えば,物の発明にあっては,その物を生産等する行為)に含まれることが前提となり,その両者が成立することが必要であるといえる。
 以上の点を前提に整理する。同法67条の3第1項1号は,「その特許発明の実施・・・政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。」と,審査官(審判官)が延長登録出願を拒絶するための要件として規定されているから,審査官(審判官)が,当該出願を拒絶するためには,①「政令で定める処分を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと」(第1要件),又は,②「『政令で定める処分を受けたことによって禁止が解除された行為』が『その特許発明の実施に該当する行為』には含まれないこと」(第2要件)のいずれかを選択的に論証することが必要となる(なお,同法67条の2第1項4号及び同条2項の規定に照らし,「政令で定める処分」の存在及びその内容については,審査等実務の円滑な運営及び公平の理念から,出願人において明らかにすべきものと解される。)。
 以上を総合すれば,審査官(審判官)において,上記の要件に該当する事実がある旨を論証しない限り,同法67条の3第1項1号を理由に延長登録の出願を拒絶すべきとの結論を導くことはできないというべきである。


(3) 医薬品の製造販売等についての承認について

 薬事法14条1項は,医薬品,医薬部外品,一定の化粧品又は医療機器の製造販売をしようとする者は,品目ごとにその製造販売について厚生労働大臣の承認を受けなければならない旨を,同条9項は,同条1項の承認を受けた者が,当該品目について,承認された事項の一部を変更しようとするときは,その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならない旨を規定している。医薬品に係る同条1項の承認及び同条9項の承認は,特許法67条2項の政令で定める処分に該当する(特許法施行令3条)。
 薬事法14条1項又は9項に基づく医薬品,医薬部外品,化粧品及び医療機器の製造販売についての承認は,品目ごとに受けなければならず,承認を受けるに当たり,当該医薬品等の「名称,成分,分量,構造,用法,用量,使用方法,効能,効果,性能,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」の審査を受けるものとされている(同条2項3号)。同条2項3号では,審査の対象として,上記各事項が挙げられているが,これらは医薬品,医薬部外品,化粧品及び医療機器の全てについての審査事項を列記したものであり,上記審査事項のうち「構造,使用方法,性能」は医療機器のみにおける審査事項であり,医薬品についての審査事項ではないと解される(同条8項1号及び2号並びに14条の4第1項1号参照)。そうすると,同法14条1項又は9項に基づく承認の対象となる医薬品は,「名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」によって特定された医薬品である。したがって,上記承認によって禁止が解除される行為態様は,当該承認の対象とされた,上記事項によって特定された医薬品の製造販売等の行為である。

(4) 特許法67条の3第1項1号所定の要件充足性の判断について

 前記のとおり,特許法67条の3第1項1号は,特許権の存続期間の延長登録出願を拒絶する要件として,「その特許発明の実施に・・・政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。」と規定している。この要件のうち,前記①の「政令で定める処分を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと」との第1要件の有無を判断するに当たっては,医薬品の審査事項である「名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」の各要素を形式的に適用して判断するのではなく,存続期間の延長登録制度を設けた特許法の趣旨に照らして実質的に判断することが必要である。
 上記の観点から,医薬品の成分を対象とする特許(製法特許,プロダクトバイプロセスクレームに係る特許等を除く。以下同じ。)について検討すると,品目を構成する要素のうち,「名称」は医薬品としての客観的な同一性を左右するものではないから,禁止が解除されたかどうかの判断要素とは解されない。また,「副作用その他の品質」,「有効性及び安全性に関する事項」は,通常,医薬品としての実質的な同一性に直接関わる事項とはいえないから,禁止が解除されたかどうかの判断要素とするまでの必要はないと解される。
 以上によると,医薬品の成分を対象とする特許については,薬事法14条1項又は9項に基づく承認を受けることによって禁止が解除される「特許発明の実施」の範囲は,上記審査事項のうち「名称」,「副作用その他の品質」や「有効性及び安全性に関する事項」を除いた事項(成分,分量,用法,用量,効能,効果)によって特定される医薬品の製造販売等の行為であると解するのが相当である。

(5) 本件事案について

 本件特許発明は,医薬品の成分を対象とする発明であるが,その医薬品に関連する製造販売等の行為について本件先行処分がされている。そこで,本件先行処分により禁止が解除されたと判断される範囲と本件処分により禁止が解除されたと判断される範囲との関係について,上記(4)の観点を踏まえて検討する。
 前記のとおり,本件先行処分は,薬事法14条1項に基づいて,平成19年4月18日付けでされた,販売名を「アバスチン点滴静注用100mg/4mL」,有効成分を「ベバシズマブ(遺伝子組換え)」,効能又は効果を「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」,用法及び用量を「他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人には,ベバシズマブとして1回5mg/kg(体重)又は10mg/kg(体重)を点滴静脈内投与する。投与間隔は2週間以上とする。」とする医薬品の製造販売承認である。そして,同処分に基づいて延長期間を4年2月3日とする特許権の存続期間の延長登録がされた(甲13,14,乙1)。本件処分は,本件先行処分において承認された用法及び用量に,「他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人にはベバシズマブとして1回7.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。
 投与間隔は3週間以上とする。」を追加することを主な変更内容とする,同条9項に基づく,医薬品製造販売承認事項一部変更承認である。
 本件先行処分では,「他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人にはベバシズマブとして1回7.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は3週間以上とする。」との用法・用量によって特定される使用方法による本件医薬品の使用行為,及び上記使用方法で使用されることを前提とした本件医薬品の製造販売等の行為の禁止は解除されておらず,本件処分によってこれが解除されたのであるから,本件処分については,延長登録出願を拒絶するための前記の選択的要件のうち,「政令で定める処分を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと」との要件(前記第1要件)を充足していないことは,明らかである。
 また,本件処分により禁止が解除された,上記用法・用量によって特定される使用方法による本件医薬品の使用行為,及び上記使用方法で使用されることを前提とした本件医薬品の製造販売等の行為が本件特許発明の実施行為に該当することは,当事者間に争いはなく,本件処分については,延長登録出願を拒絶するための前記の選択的要件のうち,「『政令で定める処分を受けたことによって禁止が解除された行為』が『その特許発明の実施に該当する行為』には含まれないこと」との要件(前記第2要件)を充足していないことも,明らかである。
 以上のとおりであり,本件においては,「本件処分を受けたことによって本件特許発明の実施行為の禁止が解除されたとはいえない」とはいえず,特許法67条の3第1項1号の定める,拒絶要件があるとはいえない。

(6) 被告の主張について

 ア この点について,被告は,①承認の対象となる医薬品は,承認書に記載された事項で特定されたものであるのに対し,特許発明は技術的思想の創作を「発明特定事項」によって表現したものであり,技術的思想を単位とするものであるから,両者は異なる,②特許発明は,発明特定事項で表現される技術的思想を単位とするものであるから,本件処分によって禁止が解除された行為があったとしても,そのことをもって,本件特許発明を,技術的思想とは無関係に,処分を受けた特定の医薬品に区分して,本件特許発明が初めて実施できるようになったということはできない,③したがって,特許法67条の3第1項1号における「特許発明の実施」は,処分の対象となった医薬品の承認書に記載された事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する全ての事項(発明特定事項に該当する事項)によって特定される医薬品の製造販売等の行為ととらえることが妥当であると主張する。

イ しかし,被告の主張に係る上記①,②の各理由は,被告主張に係る結論を導くに足る論拠にはなり得ないものであり,また,被告主張に係る上記③の結論は,特許法67条の3第1項1号の規定の趣旨及び規定の文言に反するものであって,採用の限りでない。

(ア) 前記(1)で詳述したとおり,特許権の存続期間の延長登録の制度は,「その特許発明の実施」について,特許法67条2項所定の処分を受けることが必要な場合には,特許権者は,特許権を有していても,特許発明を実施することができないという不都合が生じることから,その不都合を解消させる趣旨で設けられたものであり,同法67条の3第1項1号の要件は,その趣旨,目的を実現するために設けられた規定である。
 当該処分(先行処分も同様である。)によって禁止が解除された製造販売等の行為が,特許発明の実施行為に含まれないような場合には,当該処分は,特許発明の実施に何ら影響を与えるものではないから,特許発明の実施に処分を受けることが必要であったということはできないといえるが,当該処分によって禁止が解除された製造販売等の行為が,特許発明の実施行為に含まれている場合には,同号の規定する延長登録出願を拒絶するための前記選択的要件のうちの第1要件の充足の有無を検討することが必須となる。

(イ) この点,被告は,特許法67条の3第1項1号における「特許発明の実施」は,処分の対象となった医薬品の承認書に記載された事項のうち特許発明の発明特定事項に該当する全ての事項(発明特定事項に該当する事項)によって特定される医薬品の製造販売等の行為ととらえることが妥当であると主張する。
 被告の主張は,当該処分(先行処分を含む。)の対象となった医薬品の承認書に記載された事項のうち,特許発明の発明特定事項と重複する事項によってのみ特定された範囲について,当該処分によって製造販売等の禁止の解除がされたとする趣旨を主張するものと理解されるが,同主張は,以下のとおり,採用することはできない。

a 被告の主張は,特許請求の範囲に構成要件(発明特定事項)として記載されていない事項は,特許発明の技術的思想とはおよそ無関係な事項と扱われるべきであるとの前提に立つものと解される。しかし,特許請求の範囲における構成要件(発明特定事項)は,特許発明の技術的範囲(専有権の範囲)を画する目的で,出願人により選択,記載されるものであって,構成要件(発明特定事項)として記載されていない事項は,構成要件(発明特定事項)により限定するまでもなく,広い範囲で特許発明の技術的思想が成り立つことを意味し,その結果,広い特許発明の技術的範囲が専有権の対象となるが,構成要件(発明特定事項)として記載されていない事項が,直ちに特許発明の技術的思想と無関係であることを意味するものではない。

b 前記(1)で述べたとおり,特許権の存続期間の延長登録の制度は,特許権者に対して,研究開発に要した費用を回収することができない等の不利益を解消し,研究開発のためのインセンティブを高めるとの趣旨から,特許法において設けられた制度であり,特許法は,そのような趣旨を実現する目的から,「その特許発明の実施に・・・政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。」という要件を拒絶のための要件として規定し,審査官(審判官)が,延長登録出願を拒絶するためにはどのような内容を論証の対象とするかを明確にしたものである。
 これを薬事法14条1項又は9項に基づく医薬品を対象とした処分に限ってみても,同処分によって禁止が解除されるのは,前記説示のとおり,承認書に記載された「成分,分量,用法,用量,効能,効果」によって特定される医薬品の製造販売等の行為に限られるのであり,それを超えた特許発明の発明特定事項に該当する事項によって特定される医薬品の製造販売等の行為の全てではないことは,同法14条1項又は9項の規定から明らかである。
 本件についてみれば,本件先行処分では,本件医薬品につき,本件先行処分で承認された用法・用量(他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人にはベバシズマブとして1回5mg/kg(体重)又は10mg/kg(体重)を点滴静脈内投与し,投与間隔は2週間以上とする。)によって特定される使用方法による使用行為,及び同使用方法で使用されることを前提とした製造販売等の行為について禁止が解除されたのに対し,本件処分では,本件処分で追加された用法・用量(他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人にはベバシズマブとして1回7.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射し,投与間隔は3週間以上とする。)についての上記各行為の禁止が解除されたのであり,本件処分によって初めて,XELOX療法とベバシズマブ療法との併用療法のための本件医薬品の販売等が可能となったものである(医薬品においては,特定の用法・用量における特許発明の実施について,相当期間の臨床試験を経て,副作用が少なく,安全性が高いことが確認されてから,ようやく承認がされるのであり(甲25),このことからしても,承認における審査事項となった,特定の用法・用量とは異なる用法・用量による特許発明の実施については,禁止の解除がされていないことは明らかである。)。したがって,本件特許発明については,本件処分によって,初めて上記の範囲で禁止が解除されたのであるから,本件出願は,特許法67条の3第1項1号には該当しないことは明らかである。
 このような延長制度の趣旨及び要件規定の文言の規定振りに照らすならば,同号における「特許発明の実施」は,具体的な医薬品の製造販売等の承認処分の内容ではなく,医薬品の承認書に記載された事項のうち,特許発明の発明特定事項と重複する事項によってのみ特定される医薬品の製造販売等の行為ととらえるべきであるとする被告の主張を採用することはできない。


c 以上のとおりであり,政令で定める処分によって禁止が解除されていない特許発明の実施行為についてまで,禁止が解除されたものと擬制するとの被告の主張を採用することはできず,これに基づいて特許権の存続期間の延長登録出願を拒絶することは,誤りである。

(中略)

(8) 小括
 以上のとおり,本件出願が,特許法67条の3第1項1号に該当するとして,特許権の存続期間の延長登録を受けることができないとした審決の判断には,誤りがあるから,その余の点を判断するまでもなく,審決は取り消されるべきである。

2 特許法68条の2に基づく延長された特許権の効力の及ぶ範囲について

 本件出願が特許法67条の3第1項1号に該当するとした審決の判断には誤りがあり,その余の点を判断するまでもなく,審決は違法であることになる。また,同法68条の2に基づく延長された特許権の効力の及ぶ範囲については,本来,特許権侵害訴訟において判断されるべき論点であるが,念のため,以下のとおり検討を加える。

(1) 特許法68条の2の趣旨について

 特許法68条の2は,「特許権の存続期間が延長された場合(第67条の2第5項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は,その延長登録の理由となつた第67条第2項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては,当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には,及ばない。」と規定している。
 上記規定は,特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力は,その特許発明の全範囲に及ぶのではなく,「政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物に使用される特定の用途が定められている場合にあっては,当該用途に使用されるその物)」についてのみ及ぶ旨を定めている。

(2) 特許法68条の2の「政令で定める処分の対象となつた物」及び「用途」に係る特許発明の実施行為の範囲について

ア 「政令で定める処分」が薬事法所定の医薬品に係る承認である場合,存続期間が延長された特許権の効力が,薬事法の承認の対象になった物(物及び用途)に係る特許発明の実施行為のうち,いかなる範囲に対してまで及ぶかについては,前記のとおり,特許権侵害訴訟において検討されるべき事項であるといえるが,関連する範囲で,便宜検討することとする。

イ 薬事法14条1項は,「医薬品・・・の製造販売をしようとする者は,品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。」と規定し,同項に係る医薬品の承認に必要な審査の対象となる事項は,「名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」(同法14条2項,9項)と規定されている。このことからすると,「政令で定める処分」が薬事法所定の医薬品に係る承認である場合には,常に「効能,効果」が審査事項とされ,「効能,効果」は「用途」に含まれるから,同承認は,特許法68条の2括弧書きの「その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合」に該当するものと解される。

ウ 薬事法の承認処分の対象となった医薬品における「政令で定める処分の対象となった物及び用途」の解釈については,特許法68条の2によって存続期間が延長された特許権の効力の範囲を,どのような事項によって特定すべきかの問題であるから,特許権の存続期間の延長登録の制度趣旨(特許権者が,政令で定める処分を受けるために,その特許発明を実施する意思及び能力を有していてもなお,特許発明の実施をすることができなかった期間があったときは,5年を限度として,その期間の延長を認めるとの制度趣旨)及び特許権者と第三者との公平を考慮した上で,これを合理的に解釈すべきである。 なお,医薬品関連特許にも様々なものがあり,これを一様に論じることは困難であるため,延長登録された特許権の効力について以下に判示するところは,医薬品の成分を対象とした特許発明について述べるものである。
(ア) 特許法68条の2所定の「政令で定める処分の対象となつた物」について薬事法14条2項3号所定の前記審査事項のうち,「名称」は,医薬品としての客観的な同一性を左右するものではなく,医薬品の構成を特定する事項とならないので,延長された特許権の効力を制限する要素とは解されない。
 「成分(有効成分に限らない。)」は,医薬品の構成を客観的に特定する事項であって,上記審査事項における重要な要素であるから,延長された特許権の効力を制限する要素となる。
 「分量」は,錠剤やパックなどの単位医薬品中に含まれる成分等の量を指すため,医薬品の構成を客観的に特定する要素となり得るものの,競業他社が,本来の特許期間経過後に,特許権者が臨床試験等を経て承認を得た医薬品と実質的に同一の用法・用量となるようにし,分量のみ特許権者が承認を得たものとは異なる医薬品の製造販売等をすることを許容することは,延長登録制度を設けた趣旨に反することになるから,分量については,延長された特許権の効力を制限する要素となると解することはできない。
 「副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」も,通常,それ自体が医薬品としての実質的な同一性に直接関わる事項とはいえないから,これも延長された特許権の効力を制限する要素と解することはできない。
(イ) 特許法68条の2所定の「用途」について
 医薬品における「用途」の用例に照らすならば,上記審査事項の「効能,効果」は,当該医薬品の「用途」に該当し,延長された特許権の効力を制限する要素となる。
 上記審査事項の「用法,用量」は,医薬品においては,医薬品の患者への使用方法に関するものであるものの,医薬品においては,特定の用法,用量ごとに,その副作用の安全性を確認するための臨床試験が必須となり,そのために承認までに相当な期間を要し,その期間内は特許発明の実施が妨げられるとの状況が存在し,「用法,用量」は薬事法上の承認における各審査事項の中でも重要な審査事項の一つであること(甲25),及び本件先行処分や本件処分のように,当該医薬品の「他の抗悪性腫瘍剤との併用」を前提として「用法,用量」が定められる場合があること等に照らせば,これも「用途」に含まれ,延長された特許権の効力を制限する要素となると解するのが相当である。
(ウ) 以上のとおり,特許権の延長登録制度及び特許権侵害訴訟の趣旨に照らすならば,医薬品の成分を対象とする特許発明の場合,特許法68条の2によって存続期間が延長された特許権は,「物」に係るものとして,「成分(有効成分に限らない。)」によって特定され,かつ,「用途」に係るものとして,「効能,効果」及び「用法,用量」によって特定された当該特許発明の実施の範囲で,効力が及ぶものと解するのが相当である(もとより,その均等物や実質的に同一と評価される物が含まれることは,延長登録制度の立法趣旨に照らして,当然であるといえる。)。

エ 上記のように解した場合,政令で定める処分を受けることによって禁止が解除される特許発明の実施の範囲と,特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力が及ぶ特許発明の実施の範囲とは,常に一致するわけではない。しかし,先行処分を理由として存続期間が延長された特許権の効力がどの範囲まで及ぶかという点は,特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったか否かとの点と,直接的に関係するものでない以上,それぞれの範囲が一致しないことに,不合理な点はないというべきである。なお,政令で定める処分を受けることによって禁止が解除された特許発明の実施が,先行処分に基づき存続期間が延長された当該特許権の効力が及ぶ特許発明の実施の範囲に含まれるような場合は,重複して延長の効果が生じ得ることとなる。後行処分による延長期間が先行処分による延長期間より長い場合には,これに対応する期間,当該特許権の存続期間が延長されるが,当該期間については,当該特許発明の実施が禁止されていた部分があることに照らすと,上記のように解することに何ら不合理な点はない。

3 結論
以上のとおりであるから,原告主張の取消事由は理由があるので,審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。』



























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  1. 2014/06/04(水) 15:48:35|
  2. 延長登録

特許 知財高裁 平成25年(行ケ)第10048号審決取消請求事件

知財高裁平成26年2月26日第二部判決

<ポイント>
特許法第159条第2項
特許法第17条の2第5項において準用する同第126条第5項
(現特許法第17条の2第6項において準用する同第126条第7項)
独立特許要件
特許請求の範囲の減縮


拒絶査定時の従属請求項19を新請求項1とする補正について、特許請求の範囲の減縮(原文は限縮)を目的とする補正ではないと認定した上で、補正後の新請求項1が独立特許要件を満たさないとして補正却下しての拒絶審決を手続違反と判示したもの。


『第5 当裁判所の判断

1 取消事由4(手続違背)について

(1)手続の経緯と内容について

  ア 平成22年11月10日付け拒絶理由通知書(甲16)
平成22年11月10日付け拒絶理由通知書の拒絶理由は,以下のとおりである。
[1]
この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒
布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技
術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであ
るから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-3,19,20,21,27-31
・引用文献等 1-9
・備考
・・・・(省略)・・・・
・請求項 4-6,7-10,11-13,14-16,22-26
・引用文献等 1-10
・備考
・・・・(省略)・・・・
・請求項 17,18
・引用文献等 1-11
・備考
・・・・(省略)・・・・
引 用 文 献 等 一 覧
1.特公昭41-5590号公報
2.特開昭54-94115号公報
3.特表平2-500102号公報
4.特開昭53-132805号公報
5.特開昭52-61815号公報
6.仏国特許出願公開第2690142号明細書
7.米国特許第5368207号明細書
8.米国特許第5011047号明細書
9.欧州特許出願公開第446973号明細書
10.特開平8-230989号公報
11.特開昭62-271873号公報
[2]
この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に
規定する要件を満たしていない。
          記
請求項1の記載「...圧力制御手段は,圧力調整要素(22)を含み,該圧力調整要
素(22)の位置は,閉空間(25)における該要素の一方側に作用する制御圧力と,
該要素(22)の反対側に作用する第1室(4,104)の圧力とによって,開孔(1
9)に対して規定されること...」について,「閉空間(25)」がいかなる部材によ
って画定される「空間」であるのかが不明である。
 請求項21についても同様に,「閉空間(25)」に係る構成が不明である。
 よって,請求項1-31に係る発明は明確でない。
 なお,請求項1及び21の記載「第2室(6,116)」は「第2室(16,11
6)」の誤記ではないか。

イ 平成23年3月16日付け手続補正書(甲18)
 平成23年3月16日付け手続補正書による補正は,平成22年11月10日付
け拒絶理由通知書(甲16)に対してなされたもので,当該補正後の請求項1は,
第2の2(1)記載のとおりであり,請求項19は以下のとおりである。
【請求項19】
炭酸飲料はビールであり,小出し管(13,234)が容器の頂部の弁から容器の周
囲の外側に延びる端部まで延び,容器が卓上に直立して延びるとき,グラスを前記端
部の下方に配置することを特徴とする請求項1記載の装置。

ウ 平成23年7月8日付けの拒絶査定(甲19)
 平成23年7月8日付けの拒絶査定には,以下のとおり記載されている。
この出願については,平成22年11月10日付け拒絶理由通知書に記載した理由
1.によって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根
拠が見いだせません。
備考
引用文献1には,・・・・(省略)・・・・設計的事項である。
したがって,請求項1に係る発明は,引用文献1ないし9に記載された発明に基い
て,当業者が容易に発明をすることができたものである。
また,請求項2ないし18,21ないし26,29ないし33に係る発明も,引用
文献1ないし11に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができ
たものである。

エ 平成23年11月14日付け手続補正書(甲21)
 平成23年11月14日付け手続補正書による補正(本件補正)は,審判請求書
(甲20)に記載されているように,平成23年7月8日付けの拒絶査定(甲19)
の拒絶理由を解消するためにされたもので,本件補正後の請求項1は第2の2(2)
記載のとおりである。

オ 審決
 審決は,本件補正について,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する
と認定した上で(平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例に
よるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号),前記第2の3記
載のとおり独立特許要件違反であると判断して(同法17条の2第5項において準
用する同法126条5項。補正が特許請求の範囲の減縮(同条4項2号)を目的と
するものでなければ,独立特許要件違反による補正却下はできない。),本件補正
を却下するとともに(同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法5
3条1項),補正前発明について,進歩性がないと判断して,拒絶審決をした。

(2)手続の適法性について

 本件出願に係る平成23年7月8日付けの拒絶査定は,上記(1)ウに記載のとおり,請求項1~18,21~26,29~33に係る発明は特許を受けることができないとするもので,請求項19に係る発明は拒絶査定の理由となっていない。
 平成23年11月14日付け手続補正書による補正(本件補正)は,上記(1)エに記載のとおり,上記拒絶査定の拒絶理由を解消するためにされたもので,本件補正後の請求項(新請求項)1は,原告が審判請求書で主張しているように,本件補正前の請求項(旧請求項)1を引用する形式で記載されていた旧請求項19を,当該引用部分を具体的に記載することにより引用形式でない独立の請求項としたものであると認められる。そうすると,新請求項1は,旧請求項1を削除して,旧請求項19を新請求項1にしたものであるから,旧請求項1の補正という観点からみれば,同請求項の削除を目的とした補正であり,特許請求の範囲の減縮を目的としたものではないから,前記のとおり,独立特許要件違反を理由とする補正却下をすることはできない。
 また,旧請求項19の内容は,新請求項1と同一であるから,旧請求項19の補正という観点から見ても,特許請求の範囲の限縮を目的とする補正ではない。したがって,審決は,実質的には,項番号の繰上げ以外に補正のない旧請求項19である新請求項1を,独立特許要件違反による補正却下を理由として拒絶したものと認められ,その点において誤りといわなければならない。
 そして,旧請求項19は,拒絶査定の理由とはされていなかったのであるから,特許法159条2項にいう「査定の理由」は存在しない。すなわち,平成22年11月10日付け拒絶理由通知では,当時の請求項19についても拒絶の理由が示されているが,平成23年3月16日付け手続補正により旧請求項19として補正され,その後の拒絶査定では,旧請求項19は拒絶査定の理由とされていない。したがって,審決において,旧請求項19である新請求項1を拒絶する場合は,拒絶の理由を通知して意見書を提出する機会を与えなければならない。しかしながら,本件審判手続において拒絶理由は通知されなかったのであるから,旧請求項19についての拒絶理由は,査定手続においても,審判手続においても通知されておらず,本件審決に係る手続は違法なものといわざるを得ない(なお,仮に,本件補正が,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,条文上,独立特許要件違反を理由に補正却下することが可能とされる場合であったとしても,審決において,審査及び審判の過程で全く拒絶理由を通知されていない請求項のみが進歩性を欠くことを理由として,補正却下することは,適正手続の保障の観点から,許されるものではないと解される。)。


(3)被告の主張について

ア 被告は,本件補正の目的は,特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,すなわち,本件補正は,単純に拒絶査定の備考に明示されていた請求項を「削除」して,当該拒絶査定の備考に明示されていなかった請求項のみに補正するようなものではなく,拒絶査定時に進歩性がないと判断された請求項に係る発明すべてについて請求項19,27の記載において被引用請求項に対して付加していた事項を付加したものであり,それは補正前後で請求項に記載された発明の産業上の利用分野のみならず解決しようとする課題も同一と評すべき程度の補正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである,と審決で認定した旨を主張する。
 しかしながら,上記(2)で判示したとおり,請求項1についてみれば,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく,請求項の削除を目的にしたものであることが明らかであり,審決はそれを誤認したにすぎないものと認められるから,被告の主張を採用する余地はない。

イ 被告は,特許法の下では,適正手続のみならず,審査や審判の迅速化が十分に確保することも求められているのであって,手続の適正さと審査,審判における処分の迅速化をバランス良く満たす工夫が必要とされるものであり,たとえ手続上の適正さを欠くと外形上とらえ得る場合であっても,上記バランスの下では,それをもって当然に手続の適法性を失っているとは評すべきでない場合があり,総合的な評価がなされるべきであるから,本件における事情に照らせば,本件の手続は適正である旨を主張する。
 上記の被告の主張の趣旨は必ずしも明確ではないが,審査や審判の迅速性が要請される場合には,手続上の適正さを欠く処分であっても許容されることがあると述べるものであるとすれば,行政処分における適正手続の保障の観点から,到底採用できる主張ではない。しかも,本件審判では,上記(2)で判示したとおり,本件における補正却下の手続が適正さを欠くことは明らかであるから,被告の主張は認めることはできない。

 
ウ 被告は,本件の手続において,既に5回の補正の機会を与えているので,更なる補正の機会を与えなかったことは,原告の補正の機会を不当に奪うことには当たらない旨を主張する。
 しかしながら,実際に行われた手続補正の回数が多いからといって,本件審判における補正却下の手続が適正さを欠くことが正当化されるものではなく,拒絶理由を通知して補正の機会等を与えなかったという手続上の違法性が解消するものでもないから,被告の主張を採用することはできない。

(4)まとめ

 よって,原告主張の取消事由4には,理由がある。 』




























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  1. 2014/03/28(金) 16:00:34|
  2. 手続違背
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