知財高裁平成24年5月7日第二部判決
<ポイント>
特許法第29条第2項関係
進歩性判断
実施例間の構成の組み合わせ
引用発明の実施例間の構成について、置換可能又は任意付加的なもので適用困難なほどの構造的相違はないとして実施例間の構成を組み合わせて引用発明と本願発明との相違点の構成を得ることは容易と判示したもの。『第5 当裁判所の判断
(中略)
2 取消事由3について
(1)相違点1について
ア 引用文献1(甲1)には,前面を形成する側面16に関し,「移植部材本体11は,凹形状の面14と反対側に平坦な側面16を有する。平坦な側面16は,器具係合端部32に隣接しており,挿入端部17に当接するために本体11の長さに沿って延びている。本発明の目的のために平坦な側面16が平らであることを理解すべきである。しかしながら,平坦な側面16は,所望ならば,湾曲した面を含むことができる。」(仮訳乙2【0025】)と記載され,側面16を湾曲した面とすることが示唆されている。
また,引用文献1(甲1)には,他の実施形態として,図22に係る移植部材が開示され,当該移植部材は「凸形状面217と,反対側の凹形状面215とを有する三日月形状の本体211を有する。」もので(審決6頁20〜21行),湾曲された凸状の前面を含み,湾曲された後面および湾曲された前面が弧状インプラント構造を形成している。
引用文献1には,その他,図12に係るJ形の移植部材も開示されている。
これら例示された各移植部材は,いずれも同じ発明に関する同一の文献に記載された実施形態の例であって,図1〜6の移植部材に他の実施形態の形状を採用したときに支障が生じることを窺わせる記載も特段認められないことからすると,移植すべき場所や求める機能等に応じ,適宜にこれら各種形状を選択し得るものといえる。
イ この点に関し,原告は,引用文献1の図1〜6のインプラントは,縦軸19に対して垂直である大きな開口部20及び小さな開口部22を有しており,片側端部のみ凸形状である,このような移植部材を,引用文献の別の実施形態である図22のチャンネルを有しておらず左右対称でないインプラントとするための示唆や動機付けはなく,たとえ組み合わせたとしても補正発明に到達することはできないと主張する。
しかし,例示された各移植部材における具体的な構造は,置換可能なものや任意付加的なものであって,適用を困難にするほどの構造の相違はなく,当業者にとってそのような支障があるものとは認められない。 ウ そうすると,引用発明に,図22に係る移植部材の,湾曲された凸状の前面を含み,湾曲された後面および湾曲された前面が弧状インプラント構造を形成している点を適用し,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到できたものであるとするのが相当であって,同じ旨を判断した審決に誤りはない。
(2)相違点2について
ア 相違点2に係る補正発明の構成に関し,本願明細書(甲2)には「この多構成部分形態は同種異系移植片骨から形成されたインプラントに特に有益であるかもしれない。何とならば,或る種の適用について同種異系移植片の単一の,充分に大きい片を得ることが困難であるかもしれず,かつ/又は非実用的であるかもしれないからである。」(【0013】)と記載されている。
この記載からすると,補正発明は,同種骨からインプラントを作る場合に,一つの大きな骨片を人体から採取する必要がなく,インプラントを骨から作ることが可能である点に技術的意義があると解される。
イ ところで,引用文献2(甲17)には,図7に係るインプラントとして,上下部分52及び54から成るインプラント50が記載され,その7頁には,「インプラント50を形成する同種骨の単一部材を得るのが難しそうなとき,2個の部材,すなわち上下部分52,54でインプラント50を製造すると,より小さな同種骨を使うことができる。」(訳は被告準備書面(第1回)に添付のものによった。)と記載されている。
この記載によれば,当業者は,相違点2に係る補正発明の構成と同様の技術的事項が記載されており,その技術的事項は図7に示されているような移植片骨の具体的な形状に拘わらないことが容易に理解できる。
そして,引用発明にあっても同種骨の単一部材が手に入りにくいという問題は当然内在するから,引用文献2を知り得た当業者にとって,引用発明に対して引用文献2に記載された事項を適用することは格別困難ではなく,引用文献1には移植部材を複数の部材から構成することを排除する特段の記載もない。
ウ 原告は,共通する技術分野に属するものであるからといって,全く異なった形状のインプラント同士である引用発明に引用文献2に記載された事項を採用して,補正発明のように,インプラントが単一ユニットを形成するために組み立てられた複数の相互連結ボディから形成されるように構成することについての示唆や動機付けはなく,たとえ組み合わせたとしても補正発明に到達することはできないと主張する。
しかし,引用文献2の当該記載に接した当業者には,記載された事項が図7に示されているような移植片骨の具体的な形状に拘わらない事項であることは容易に理解できるものであり,引用発明にあっても同種骨の単一部材が手に入りにくいという問題は当然内材するから,引用発明において,インプラントが単一ユニットを形成するために組み立てられた複数の相互連結ボディから形成されるように構成することについての示唆や動機付けはあると認められる。エ そうすると,引用発明に引用文献2に記載された事項を適用し,相違点2に係る補正発明のように構成することは当業者が容易に想到できたものであり,その旨判断した審決に誤りはない。
3 取消事由4について
補正前の本願発明と引用発明とは,補正前の本願発明が「湾曲された凸状の前面」を含み,「湾曲された後面および湾曲された前面が弧状インプラント構造を形成し」ているのに対し,引用発明では,そのような特定はない点,すなわち,補正発明に係る上記相違点1と同様の点で相違し,その余の点で一致すると認められる。
そうすると,上記で検討したのと同様の理由により,相違点に係る補正前の本願発明の構成は,引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得るもので,補正前の本願発明の効果も,当業者が予測し得た程度のものであって格別のものとはいえない。
したがって,補正前の本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。』
- 2012/05/15(火) 15:28:29|
- 進歩性(特29条2項)
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知財高裁平成24年3月8日第三部判決
<ポイント>
特許法第159条2項関係
意見書提出機会
手続違背
意見書提出期限が延長されたが、提出期限前に審理終結通知後に審決をなし、意見書提出機会を付与することなくなされたものであるとして、審決の取り消す旨を判示したもの。
『第4 当裁判所の判断
当裁判所は,本件審決には重大な手続違背があると判断する。その理由は,以下のとおりである。
1
特許法は,審判官が,拒絶査定不服審判手続において,拒絶査定の理由と異なる拒絶理由を発見した場合には,審判請求人に対して,拒絶理由を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならないと規定する(平成14年法律第24号による改正前の特許法159条2項,50条)。同条が,審判官において,査定の理由と異なる拒絶理由を発見した場合に,相当の期間を指定して,意見書提出の機会を付与した理由は,審判請求人に意見を述べる機会を与えることによって,審判官の誤解などに基づいた判断がされることを,できる限り防止して,審判請求人に不利な審決がされることを回避することにあり,同規定は,審判請求人のための手続的な保障規定といえる。また,意見書提出のための相当の期間を定めることも,上記の手続的な保障を実質ならしめるためのものであると解される。 上記の観点から検討する。本件においては,平成23年3月23日付けの拒絶理由通知に対する意見書の提出期限は,当初同年6月30日とされたが,原告からの合計3か月の期間延長申請に対して許可がされたことにより,同年9月30日まで
延長された。しかるに,本件審判においては,上記提出期限より約2か月前である平成23年7月25日付けで審理終結通知がされ,同年8月9日付けで上記拒絶理由を理由として本件審決がされた。したがって,本件審決は,実質的に意見書提出
の機会を付与することなくされたものであり,手続違背の違法があるといえる。
この点,被告は,本件審決の審決書が送達される約1か月前である同年7月25日に,審理終結通知書が原告に対して発送されているから,原告に,意見書提出の意思があったのであれば,審理終結通知書が発送された時点で,特許庁に対して,確認,上申書提出などの行為をなし得たはずであると主張する。しかし,被告の主張は,意見書提出の機会を付与すべきと定めた特許法の上記の趣旨に反する主張であり,採用の余地はない。』
- 2012/05/08(火) 21:45:48|
- 手続違背
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知財高裁平成24年4月25日第四部判決
<ポイント>
特許法第29条第2項関係
進歩性
動機付け
本願発明と引用発明との相違点に係る構成を本願発明のようにする動機付けがないとして進歩性を肯定したもの。『第4 当裁判所の判断
1 本件発明について
本件発明の要旨は,前記第2の2のとおりであり,本件明細書(甲7)によれば,本件発明は,以下のとおりのものである。
(1)本件発明は,高効率データ圧縮を採用したレコーダ等に好適な信号処理装置において,デジタルデータを記録する際に用いられる各種のデジタルデータ圧縮技術では,再生するためのデータ処理に時間がかかり,頭出しにおいて聴感上無視できないほどの再生時の立ち上がり遅れを生ずるという課題を解決する発明である。
(2)本件発明は,前記課題を解決するために,以下の処理を行うものである。
ア 外部記録媒体に記録されている圧縮データに対し,
イ 発音指示に先立って,圧縮データの所定の開始位置から所定の部分までをあらかじめデコード処理して元のデータに戻し,
ウ 発音指示があると,先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに,先頭データに基づく音信号の発生と平行して所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,
エ 以降のデコード処理されたデータに基づいて音信号を生成する。
(3)本件発明は,外部記憶手段に記録された圧縮データの任意の位置からデコード処理を行う場合,デコード処理に先立って,圧縮データのデコード開始位置から所定の部分までをあらかじめ元のデータに戻して所定の記憶手段に記憶し,所定の部分以降のデコード処理の準備が整った時点で,所定の記憶手段に記憶したデコードされたデータを出力するとともに,所定の部分以降の圧縮データについて順次デコード処理を行って,デコード処理されたデータの出力と平行して所定の部分以降のデコード処理を行い,先にデコードされたデータの出力に引き続いて所定の部分以降のデコード処理により生成されたデータを出力する演算手段を具備するようにしたため,圧縮データのデコード時における時間遅れが生じることがなく,高圧縮率の圧縮法を効果的に用いることができるという効果を奏するものである。
(中略)
4 取消事由1(引用発明1に基づく進歩性に係る判断の誤り)について
(1)相違点2に係る判断の誤りについて
ア 本件発明及び引用発明1は,いずれも,圧縮データのデコード処理に伴う再生開始時間の遅れを解消するという共通の課題を有するところ,本件発明は,圧縮処理がされている再生の開始位置から所定の部分までをあらかじめデコードしておき,当該部分を再生する間に平行して続いて再生する部分のデコード処理を行うことをその解決手段とするものである。
これに対し,引用発明1は,再生の開始位置から所定の部分までについては圧縮しない状態でデータを保存しておき,当該部分を再生する間に,それに続く圧縮した状態で保存しているデータについてデコード処理を行うことをその解決手段とするものである。
そうすると,本件発明は,再生の開始位置から所定の部分までは圧縮しないデータを用いることにした引用発明1とは異なり,再生の開始位置から所定の部分についても圧縮したデータをそのまま用いることができるという技術的特徴を有するものということができる。
イ この点について,原告は,引用発明1において,発音遅れを解消する手段として非圧縮データを記憶するものであるから,非圧縮データの記憶手段の容量節約のために,これを圧縮データとし,必要に応じてあらかじめデコードするように構成することは,当業者には当然の事柄であると主張する。
しかしながら,引用発明1では,従来の信号処理装置のように,再生の開始位置から所定の部分にも圧縮データを用いると,発音指示を契機としてデコード処理が開始されることになるため,発音が開始されるまでの時間遅れが生じるという課題があった。引用発明1は,その課題を解決するために,再生の開始位置から所定の部分についてはデータを圧縮しないことにより,既に発音が開始されるまでの時間遅れが生じるという課題を解決することを可能としたものであって,再生の開始位置から所定の部分のデータについて,これを圧縮するという動機付けは存在しない。
また,引用例1には,引用発明1の効果として,楽音信号の所定期間までのディジタル・データの長さは,圧縮処理を施したデータの長さに比べて十分短いため,圧縮効率を悪化させなくて済むと記載されているから,「非圧縮データの記憶手段の容量節約」のために,圧縮データとする動機付けも存在しない。 したがって,相違点2の構成について,当業者が当然に想到し得る事項であるということはできない。
ウ
原告は,引用発明1は,圧縮処理対象が一部であることから,結果的に,所定の開始位置から所定の部分までの先頭データは圧縮されていないデータとして記憶するものにすぎない,本件発明の特徴がデータをデコード処理することにあるとすると,「全て」のデータを圧縮することが本件発明の必須の構成であると解する理由はない,本件発明と引用発明1とは,発音指示が発生した時点で直ちに発音するために,非圧縮データに基づく発音とするという,同一の解決原理に基づくものであるとも主張する。
しかしながら,本件発明は,楽曲の全体について圧縮データを用いることを前提として,発音が開始されるまでの時間遅れを防止するために,圧縮されている再生の開始位置から所定の部分までをあらかじめデコード処理して対処するのに対し,引用発明1は,その時間遅れを防止するために,当該部分について,もともとデータを圧縮しないで対処するというものである。圧縮データにより保存された楽曲を発音するためには,圧縮データをデコード処理し,圧縮しないデータとしなければならないことは当然の前提であるが,圧縮しないデータに基づく発音にはそもそもデコード処理をする必要がなく,本件発明と引用発明1とを同一の解決原理に基づくものということはできない。発音遅れを防止するために,圧縮データをあらかじめデコード処理する構成を設けるか,あるいは圧縮しないデータのまま保存しておくかという点こそ,本件発明及び引用発明1のそれぞれの課題解決原理というべきであって,本件発明と引用発明1とは,解決原理が根本的に異なるものというほかなく,単に圧縮処理対象が全部か一部かについて相違するだけという違いではない。 原告の主張はいずれも採用できない。
エ 以上からすると,本件審決の相違点2に係る判断に誤りはない。
(2)相違点3に係る判断の誤りについて
ア 前記3(4)のとおり,「データ全体を伸長するもの」との引用例2の記載からすると,引用発明2においては,音声圧縮データの伸長の対象となる「音声データ」とは,再生すべき音声データの全部を意味し,音声データの先頭部分のみを意味するものではないことは明らかである。
また,音声データの「先頭10秒間」とは,それに引き続く部分の音声データを継続的に再生することを前提とするものではなく,再生すべき「音声データ全部」を意味するものと解される。
そして,引用例2には,前記のとおり,音声伸長データが必要になったとき,「まだ伸長されていなければ,伸長データが作成されるまで待つ」「伸長待ち時間が少なくなる可能性が高くなる」などの記載があることからすると,引用発明2は,目的とする「音声データ全部」の伸長データが作成されるまで待つものであって,伸長されたデータのうちの先頭部分を再生しつつ,引き続く部分の伸長データを作成するものではない。
イ
したがって,引用発明2には,再生する上で優先順位の高い「音声データ全部」をあらかじめ伸長(デコード)しておいてこれを所定の記憶手段に記憶する構成を採用するものであって,引用発明1に引用発明2を組み合わせたとしても,目標とする音声データの「所定の開始位置から所定の部分まで」をあらかじめデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶するという相違点3の構成に想到し得るものということはできない。
ウ 原告は,引用発明2が,目標とする音声データの「所定の開始位置から所定の部分まで」をあらかじめデコード処理する構成を有することを前提とした上で,引用発明1及び2は,同一の課題を有するものということができるから,各発明を組み合わせる動機付けは十分に存在するものというべきであるなどと主張するが,その前提自体が誤りであることは,先に述べたとおりであるし,各発明を組み合わせる動機付けが認められないことも,前記(1)(イ)のとおりである。 また,原告は,本件審決の引用発明2及び本件発明と引用発明2との一致点の認定によると,引用例2には,相違点3の構成が開示されているとも主張するが,本件審決は,本件発明と引用発明2との相違点5−2及び3において,相違点3と同様の構成について相違点として認定し,判断しているものである。原告の主張は,本件審決の一致点の認定を正解しないものというほかなく,採用できない。
(3)小括
以上からすると,本件発明は,引用発明1に引用発明2を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができるものということはできないから,本件審決の判断に誤りはない。
5 取消事由2(引用発明2に基づく進歩性に係る判断の誤り)について
(1)相違点5の認定の誤りについて
本件発明では,特許請求の範囲に記載されているとおり,「圧縮データの所定の開始位置から所定の部分まで」のみならず,その後にデコードされた圧縮データによる音信号も生成されるものである。これに対し,引用発明2における音声データの「先頭10秒間」は,引用例2の「先頭10秒間だけの頭だし再生」の記載からすると,音声データの先頭10秒間に引き続く部分の継続的な再生を前提としているものではなく,再生する目的の「音声データ全部」としての「先頭10秒間」を意味するものであることは,前記4(2)アのとおりである。
したがって,引用発明2は,再生すべきデータ全体の伸長が済んだ状態において,発音開始指示が可能となるものであるから,音声データの先頭の10秒間に引き続く部分の次の10秒間が再生されることが当然に予定されているという原告の主張は採用できない。
以上からすると,本件審決の相違点5の認定に誤りはない。
(2)相違点5に係る判断の誤りについて
引用例2には,先頭の10秒間の音声データに対する頭だし再生ではない再生,すなわち,先頭の10秒間に続く10秒間の音声データを継続的に再生することに関する記載や,それを示唆する記載はない。
また,先頭の10秒間に続く10秒間の音声データについて,自動的に最優先順位を付して再生することに関する記載もない。
したがって,仮にデコード済みのデータを出力しながらこれに続く圧縮データのデコードを同時平行して行うことが原告の主張のとおり周知慣用技術であったとしても,引用発明2の先頭の10秒間についてあらかじめデコードし,この先頭データの再生中に,引用発明1のように,この先頭データに引く続く部分を順次デコードして連続して再生するよう構成することが,当業者にとって容易であるということはできない。 以上からすると,相違点5に係る本件審決の判断に誤りはない。
(3)相違点5−1ないし3の認定及び判断の誤りについて
本件審決は,相違点5が存在することから,本件発明と引用発明2とには,結果的に相違点5−1ないし3が存在するとする。
相違点5に係る構成が,当業者が容易に想到し得るものということができないことは,前記(2)のとおりであり,本件審決の相違点5−1ないし3に係る認定及び判断についても,同様の理由により,誤りがないことは明らかである。
(4)小括
以上からすると,本件発明は,引用発明2に引用発明1を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができるものということはできないから,本件審決の判断に誤りはない。』
- 2012/05/01(火) 16:37:19|
- 進歩性(特29条2項)
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知財高裁平成24年3月28日第四部判決
<ポイント>
特許法第30条第1項関係
新規性喪失の例外
法改正
新規性喪失の例外の規定の適用について、法改正後の適用範囲拡大の趣旨を法改正前の出願にも適用すべきと主張を認めなかったもの。『第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(引用発明1に基づく本件発明の進歩性に係る判断の誤り)について
(1)引用例1を引用例として用いた判断の誤りについて
ア 改正前特許法30条の解釈について
(ア) 改正前特許法30条は,「特許を受ける権利を有する者が試験を行い,刊行物に発表し,又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表することにより,第29条第1項各号の1に該当するに至つた発明について,その該当するに至つた日から6月以内にその者が特許出願をしたときは,その発明は,同項各号の1に該当するに至らなかつたものとみなす。」と規定されていたところ,平成11年特許法改正により,「特許を受ける権利を有する者が試験を行い,刊行物に発表し,電気通信回線を通じて発表し,又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表することにより,第29条第1項各号の1に該当するに至つた発明は,その該当するに至つた日から6月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第1項及び第2項の規定の適用については,同条第1項各号の1に該当するに至らなかつたものとみなす。」と改正されたものである。
(イ) 平成11年特許法改正による改正前特許法30条の改正は,新規性喪失の例外適用の拡大を目的とするものであり,改正前においては,新規性喪失の例外が適用される範囲は,特許出願に係る発明と発表等がされた発明とが同一である場合に限られていたが,当該要件を見直し,これを同一のみならず,自己の発表等を行った発明から出願の発明が容易に発明をすることができた場合(両者に相違点が存在する場合)まで適用可能とし,当該発明の新規性又は進歩性の判断において,発表等の行為を考慮しないこととする趣旨の改正であるとされる(甲11,乙2)。
このように,改正前特許法30条においては,新規性喪失の例外が適用される範囲は,進歩性の判断の場合を含まず,新規性の判断の場合のみであると定められており,特許庁における運用についても,同様であったことについては,原告も争うものではない。平成11年特許法改正は,上記解釈及び運用を前提として,例外が適用される範囲を進歩性判断の場合にまで拡大したものである。
(ウ)
平成11年5月14日法律第41号附則2条は,平成11年特許法改正に伴う経過措置を定めるところ,同条1項は「この法律の施行の際現に特許庁に係属している特許出願に係る発明の新規性の要件については,その特許出願について査定又は審決が確定するまでは,なお従前の例による。」と定めている。これは,新規性喪失の例外の適用が拡大されると,第三者に対して不利益変更となり得るものであることから,新規性の要件について経過措置を設けたものと解される。特許庁における取扱いも,上記経過措置に従い,平成11年12月31日以前の特許出願については,「公開した発明が特許出願に係る発明であること」を要求しているものである(乙3)。
イ 改正前特許法30条適用の適否
原告は,平成11年特許法改正により,進歩性判断の場合にまで例外規定が拡大された趣旨をふまえ,改正前特許法30条の適用においても同様に解し,本件出願にもその趣旨を拡大して同条が適用されるべきであって,引用例1を引用例として用いることはできないと主張する。
しかしながら,前記アの改正前特許法30条の解釈によれば,同条を原告主張のように拡大して適用することができないことは明らかである。原告の主張は採用できない。ウ 小括
以上からすると,本件出願に関し,引用例1を引用例として用いた本件審決の判断に誤りはない。』
- 2012/04/16(月) 19:50:54|
- 新規性喪失の例外
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知財高裁平成24年3月28日第四部判決
<ポイント>
特許法第17条の2第4項各号関係
特許請求の範囲の減縮
請求項の数の増減
審判請求時に行った請求項数を増加させる補正について、不めいりょうな記載の釈明を目的としたものであることは認めたが、補正前の各請求項には全く存在しない構成を付加することで請求項数を増加させたものであり、既にされた審査結果を有効に活用できる範囲内で行った補正ではないとして、補正の却下を支持したもの。『第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(本件補正を却下した判断の誤り)について
(中略)
(2)本件補正の適否について
ア 本件補正は,拒絶査定不服審判の請求から30日以内にされたものであるから,法17条の2第1項4号に基づくものであるところ,同条4項は,このような場合において特許請求の範囲についてする補正が,同条4項1号ないし4号に掲げる事項を目的とするものに限っている。
しかるところ,本件補正は,前記第2の2に記載のとおり,請求項の数を22から56に増加させ,かつ,請求項1を含む特許請求の範囲の記載を大きく書き換えるなどするものであって,請求項の削除(同条4項1号)又は誤記の訂正(同項3号)のいずれを目的とするものでもないことが明らかである。
イ 本件補正のうち,本願発明の特許請求の範囲の記載にある「配列」との文言を「販売ディスプレーシステム」と改めた点についてみると,原告は,被告が平成20年12月10日付け拒絶理由通知(甲5)において,「なお,本願発明は,店頭等での商品の「配列」(「物」か「方法」か必ずしも明確ではない。)そのものを発明としている。これは,顧客への商品の訴求効果の増大を目的とする商業上の取り決めにすぎないともいえ,本願発明は,特許法が対象とする発明,即ち自然法則を利用した技術的思想の創作であるのかに疑義が残る。」と指摘したことから,これを受けて,出願に係る発明を物の発明として特定する趣旨で,「配列」との文言を「販売ディスプレーシステム」と改めたものと認められる(乙1)。
ところで,「配列」とは,一般に,「ならべつらねること。順序よくならべること。また,そのならび。」(乙2。広辞苑第4版)を意味するものの,本願発明においては,上記拒絶理由通知も指摘するとおり,その技術的意義が必ずしも明らかであるとはいい難い。
ウ そこで,本件明細書の記載を参酌すると,本願発明は,前記(1)アないしオに記載のとおり,使い捨て吸収性物品(おむつ)には,それを着用する者の発達段階に応じた形体がある一方で,各形体の寸法が重複している場合があるため,消費者が正しい吸収性物品を選択することが困難であったという課題を解決することを目的とするものであって,その課題を解決するために,着用者の発達段階に応じた特定の形体のものについて特定のしるしを定め,これを店舗のディスプレーパネル,パッケージ(包装)又は広告に付けることに加えて,そのようなパッケージ(包装)に入った吸収性物品を店舗に特定の順序で配置し(【図2】及び【図3】の実施例。製品の配列),あるいは当該しるし自体を特定の順序で並べた機械装置などの選択装置を店舗に配備すること(【図4】及び【図5】の実施例。しるしの配列)によって,当該課題を解決するという技術的思想に基づくものであるといえる。
そして,本件補正前の請求項1ないし9に係る発明は,いずれも吸収性物品が「構造的に相違によって識別可能である配列」を構成しているのみで,それ以上に特段の制限もないから,そこにいう「配列」との文言は,店舗におけるディスプレー(製品の配列)及び選択装置(しるしの配列)の各実施例を包含するものであるのに対して,請求項10ないし22に係る発明は,いずれも吸収性物品が特定の「包装に封入され」ているから,そこにいう「配列」との文言は,専ら店舗におけるディスプレー(製品の配列)のみを包含するものであるといえる。
このように,本願発明における「配列」との文言は,依然としてそれ自体が特許法2条3項にいう「物」であるのか「方法」であるのかが必ずしも一義的に明らかではないという点が残り,請求項の他の部分の記載のために対象が製品及びしるしを包含する場合としるしのみを包含する場合があるとはいえるものの,製品又はしるしに関する「ならべつらねること。順序よくならべること。また,そのならび。」(乙2。広辞苑第4版)を意味するにとどまり,それ以上の特段の技術的意味を持つものとは認められない。
このことを前提として,本件補正後の請求項1ないし56をみると,これらの発明は,いずれも「販売ディスプレーシステム」を発明の対象としているから,製品の配列のみを想定しており,選択装置すなわちしるしの配列を包含していないことが明らかである。
以上によれば,本件補正のうち,「配列」との文言を「販売ディスプレーシステム」と改めた点は,前記イの平成20年12月10日付け拒絶理由通知(甲5)が「配列」との文言について示した事項について原告による釈明を目的としたものであり(法17条の2第4項4号),併せて,店舗におけるディスプレー(製品の配列)及び選択装置(しるしの配列)の双方を包含していた本願発明の特許請求の範囲を減縮するため,店舗におけるディスプレー(製品の配列)に限定することを目的としたもの(同項2号)とみることができる。したがって,本件補正が結果として明瞭でない記載について釈明の目的を達したか否かはしばらく措くとしても,本件補正のうち上記の点は,法17条の2第4項2号及び4号に該当するものというべきであって,少なくとも,上記の点が同条に違反するとの本件審決の判断は,誤りであるというほかない。
エ
しかしながら,本件補正のうち,本願発明の特許請求の範囲の記載から,本願発明の各吸収性物品形体に関する「着用者の発達の第一段階」と「着用者の発達の第二段階」との相違についての「発達の種々の段階」に「対応するように設計されたシャーシを含む」ものであるという限定を削除し,本件補正発明における「第一」及び「第二」の各吸収性物品形体の相違について,単に「異なる形体を有している」とするにとどめた点についてみると,これは,本願発明における「着用者の発達の第一段階」と「着用者の発達の第二段階」との相違に関する上記限定を削除するものであって,本願発明の特許請求の範囲を拡大するものというほかない。
したがって,本件補正のうち上記の点は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえず,本件補正は,法17条の2第4項2号に違反するものというべきである。オ
さらに,法17条の2第4項2号は,同条1項4号に基づく場合において特許請求の範囲についてする補正について,「特許請求の範囲の縮減(第36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明その補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものと規定しているところ,これは,審判請求に伴ってする補正について,出願人の便宜と迅速,的確かつ公平な審査の実現等との調整という観点から,既にされた審査結果を有効に活用できる範囲内に限って認めることとしたものである。そして,同号かっこ書が,補正前の「当該請求項」に記載された発明と補正後の「当該請求項」に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る旨を規定していることも併せ考えると,同号は,補正前の請求項と補正後の請求項とが,請求項の数の増減はともかく,対応したものとなっていることを前提としているものと解され,構成要件を択一的に記載している補正前の請求項についてその択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合あるいはその反対の場合などのように,請求項の数に増減はあっても,既にされた審査結果を有効に活用できる範囲内で補正が行われたといえるような事情のない限り,補正によって新たな発明に関する請求項を追加することを許容するものではないというべきである。 しかしながら,本件補正は,請求項の数を22から56に増加させるものであるところ,例えば,第一の吸収性物品の形体が「臍の緒のくぼみを有している」(本件補正後の請求項2),「第一の吸収性物品の毛布のような感触を提供する特徴を有している」(同3),「第一の吸収性物品を第一の装着者により良く適合させる」(同4),「第一の装着者の自由な動きを可能にする」(同5),「狭い股領域を有している」(同6),「可撓性ファスナーを有している」(同7),「高拡張側部を有している」(同8)又は「第一の吸収性物品の湿り度を示す」(同9)など,いずれも本件補正前の各請求項には全く存在しない構成を付加することで,新たな発明に関する請求項を多数追加しているから,既にされた審査結果を有効に活用できる範囲内で補正を行っているといえるような事情が見当たらない。
したがって,本件補正のうち,以上のとおり請求項2以下に請求項を多数追加している点は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえず,本件補正は,法17条の2第4項2号に違反するものというべきである。(3)原告の主張について
以上に対して,原告は,本件補正が本願発明を減縮したものであり,また,この点が本件審判では問題とされていなかったから本件訴訟の審理対象とはならない旨を主張する。
しかしながら,本件補正が本願発明を減縮するものではないことは,前記(2)エに認定のとおりである。また,本件審決は,本件補正の適否について判断を下している以上,本件訴訟は,当該判断の是非を審理の対象とするものであって,本件補正の違法性に関するある特定の主張が本件審決に記載されていなかったからといって,当該主張が本件訴訟の審理の対象とならなくなるものではない。 よって,原告の上記主張は,採用できない。
(4)小括
以上の次第であるから,本件補正は,法17条の2第4項2号に違反するものであって,法159条1項が読み替えて準用する法53条1項により却下を免れず,これと結論を同じくする本件審決を取り消すことはできない。』
- 2012/04/12(木) 20:20:09|
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